サラリーマン行政書士の読書日記

本ブログは、サラリーマン行政書士である私が、本業、副業、中小企業診断士に挑戦若しくは奮闘する様及び読書記録を綴るブログです。



『働きアリからの脱出』働き方改革は自分事で考える。

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昨日、元マイクロソフト執行役員である越川慎司さん(現在クロスリバー代表取締役)の新刊本が発売されました。

働きアリからの脱出: 個人で始める働き方改革』、早速読んでみました。

 

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表紙の働きアリのリアルさよ…。 

 

 

 

働き方改革は手段であって、目的ではありません

 

越川さんが マイクロソフト時代から繰り返し言っていること。

それは「働き方改革は手段であって、目的ではない」ということ。

 

今の日本の働き方は、だんだんと改善してはいるものの、まだまだ手を付けないといけないところが多くあります。

平成も終わろうとしているのに、人事制度は昭和からあまり変わっていなかったり、営業は長年のカンで勝負していたり、事務屋も膨大な紙と戯れていたり。

戦後の高度経済成長の世界に対するインパクトは大きく、ジャパンアズナンバーワンなどと言われていました。

ですがその反動で、成功体験にしがみつき、イノベーションのジレンマに陥っています。

成功体験は捨て去る、というのはよく言われること。

 

働き方を改革することは必要でしょう。

でも、政府主導の「働き方改革」に乗っかりこそすれ、本当の目的にしてはいけません。 

これでは働きアリから脱出することはできないのです。

 

「働き方改革」を目指してはいけない

 

「働き方改革を目指さないでください」

このセリフも、マイクロソフト時代から仰っていますね。

前著でもかかれていました。

 

新しい働き方 幸せと成果を両立する「モダンワークスタイル」のすすめ

新しい働き方 幸せと成果を両立する「モダンワークスタイル」のすすめ

 

 

私ももちろん読んでいます。

今回の新刊と繋がる部分も多いのですが、『新しい働き方』は、マイクロソフトで実現してきた「モダンワークスタイル」のススメです。 

www.co-idealblog.com

 

さて、ここで「目指すな」と指摘しているのは、目的化した働き方改革のことです。

目的と手段が逆になってしまっている例はよく見かけますね。

  • 利益を上げるための不正
  • 従業員の幸せ第一を掲げ、利益追及に渋い顔をする経営者
  • ダイエットするための不健康な食生活

挙げはじめたらきりがありません。

まぁそこら中にあることですが、気付いたなら是正しましょう。

 

働き方改革の目的は生産性向上です。

働き方改革自体は、生産性向上のための手段であって、それ自体が目的ではありません。

だから、働き方改革を目指してはいけないのです。

 

本当の働き方改革はどのようにはじめたらよいのか

 

働き方改革の目的は生産性向上だということは分かりました。

では、どのように 進めていけばよいのでしょう。

 

みんなで始める働き方改革

 

一番多いのはトップダウンでしょう。

政府が言っている!法律も改正される!

いざ、働き方改革の波に乗るぞ!!

これがよくありがちな失敗例としてよく言われるところ。

まさに働き方改革を目的にしてしまっている例ですね。

 

上から振ってくるものは、従業員にとっては指示、命令。

しっかりとしたビジョンを提示して、繰り返し伝え、腹落ちさせなければやらされ感はぬぐえません。

 

では、ボトムアップはどうでしょうか。

ものすごいリーダーシップを発揮する人がいればよいですが、そんな人もそうそういません。

また、こんな取り組みをしたい!と上申したものが通るとは限りません。

ボトムアップの怖いところは、盛り上がった従業員が会社の方針とはズレた取り組みを提案してしまうところ。

下には権限、決裁権があるわけではないので、最終的に上司、経営層判断にゆだねられます。

その結果が「ノー」であった場合のモチベーションダウンは大きいです。

実際に目の当たりにしたことがありますが、やる気のあった人ほど振れ幅が大きいものです。

 

結局のところ、上からでも下からでも、なかなかうまくいくものではありません。

という当たり前のところに落ち着きます(笑)

 

で、結局どうしたらよいの? 

その答えが「個人で始める働き方改革」です。

 

個人で始める働き方改革

 

会社は組織である以上、上下の軋轢はなくなりません。

でもこれは自分ではどうしようもない、アンコントローラブルなもの。

ここに攻め込んでもなかなか勝利は得られません。

上司のことを愚痴ってみても、何もかわりません。

他人ですから。

 

では、自分はどうでしょう?

自分はコントローラブルなものですから、自分が自発的に、自律的に、変わっていけばよいのです。

人間は働きアリのように役割が決まっているわけではありません。

自分で考えて、働き方を変えていけばよいのです。

 

本書の副題は「個人で始める働き方改革」です。

世の中の働き方改革がうまくいっていなくても、自分は変わっていくことができるよ、というような思いを感じますね。

 

この、アンコントローラブル(他人、外部環境)、コントローラブル(自分、スキルや健康)の概念を、越川さんは外円と内円のイメージで表していて、わかりやすい。

仕事ではアンコントローラブルなところを避けることはできませんが、その中にあるコントローラブルな部分を、個人の働き方改革により拡げていくことができるのです。 

 

このアンコントローラブル、コントローラブルの概念って、前者は他責、後者は自責と言うことですよね。

繰り返しになってしまいますが、他人を責めても変わらない。

自分で責任をとれる部分のことを、いかに自分事として自覚して、改善していくか。

ここが本質的なテーマだと思います。

 

本書でもこ本質にたどり着くのに半分以上紙面を割いていますが、後半は「そのために何をすべきか」が書かれています。

 

ここからは個別具体的なソフトスキル、ハードスキル(業務スキル)の話題ですので、じっくりと読んでみてください。

個人の働き方改革の実践です。

 

働きアリからの脱出: 個人で始める働き方改革 (単行本)

働きアリからの脱出: 個人で始める働き方改革 (単行本)

 

  

働き方改革の目的、生産性向上とは

 

ここからは、私の会社での働き方改革の取り組みと、私個人の働き方改革の取り組みについて書いていきたいと思います。

が、その前にちょっと、前提条件として生産性向上について説明をしておきたいと思います。

 

そもそもの働き方改革の目的が生産性向上であるとは先に述べました。

では、生産性向上とはどういうことしょうか?

会社によって、個人によって異なると思いますが、共通するのは生産性向上でしょう。

生産性指標は分子がアウトプット、分母がインプットです。

ですから、アウトプットを増やすかインプットを減らすかすると、向上します。

両方達成できればよりベターですね。

 

アウトプットを増やす

 

アウトプットを増やすというのは、同じ時間で多くの付加価値を生み出すこと。

日本は大量生産大量消費の国ではなくなってきていますから、アウトプットとは量的ではなく、質的な付加価値ですね。

これにより製品やサービスの国際競争力をつけていきます。

 

インプットを減らす

 

インプットとは投入です。

製造業なら材料を含みますが、働き方改革について言えば、労働量でしょう。

人件費、労務費といってもいいのですが、このふたつの主なものは時間×単価で構成されており、単価は減らすことができません。

だから時間、労働量を減らすということになります。

 

でも、ここに大きな間違いが生じます。

それについてはこの後に書きます。

 

労働量を減らすというのは難しいことで、単純に残業禁止!定時退社!などとすれば、当然アウトプットも落ちるので生産性は向上しません。

ですから、アウトプットを変えずに、インプットを減らす必要があります。

 

このようなアウトプットとインプットの関係性を考えながら、何をするかを考えていかなければなりません。

 

働き方改革でありがちな間違い

 

私の会社でも、自治体に働き方改革のアドバイザーを派遣していただくことになりました。

働き方改革のイメージと、どんなことをするのかをブレストするワークショップをやりました。

 

でもこれって、目的は?

アドバイザーにきていただくことになったきっかけは、

A「なんか取り組まないとね」

B「自治体からアドバイザーを無料で派遣してもらえるらしいよ」

A「とりあえずやってみようか」

といったところ。

 

とりあえずやってみて、ワークショップの中で目的を見出し、腹落ちさせていくのかなと。

まだまだ始まったところなので、今後に期待しておりますが、どうなることやら。

 

ブレストで出てきたアイデアについて、やはり時短に関するものが多かったのですが、これについては、私は少し違和感を感じております。

 

政府の働き方改革関連法は時短についてのものが多いので、それに流されてしまっているのかなと。

 

時短≠働き方改革

 

時短施策は、それ自体が働き方改革なのではありません。

何のために働き方改革をするのか、その為にどんな働き方改革をするか、これらのことを考え、実行するための時間を作るためにするのが時短施策です。

 

ですから、ノー残業デー、残業抑制、定時退社、有休休暇取得率向上、これらは働き方改革ではありません。

先ほどの「インプット、労働量を減らす」の勘違いはここです。

 

時短しただけでアウトプットは上がらない。

だから、生産性向上で分母を減らすのは、一工夫が必要なのです。

 

時短施策で原則に立ち返る

 

そもそも、残業せず定時で返るのは、元々の労働契約に立ち返っただけ。

残業が必ずしも悪いわけではないですが、残業の日々というのは毎日が例外で、ノー残業デーをわざわざ実施した日が原則なのです。

 

労働契約書には所定労働時間と所定「外」労働時間が書いてあります。

「外」なので、原則は所定労働時間のほうです。

ひな形をぐぐってみると、中には所定労働外時間の記載のないものもありますね。

就業規則で謳っているのだと思いますが、労働契約を締結し、入社した後に、就業規則を渡されたり説明されたりする流れが一般的だと思います。

 

ですから、所定労働時間に納めるための時短施策は原則に立ち返るためのものであり、働き方改革ではなく是正といったほうが、私はしっくりきます。

 

有休休暇の取得率向上も、元々ある権利をちゃんと行使しよう、という是正ですね。

 

私個人の働き方改革

 

私個人としては、以下のような流れで働き方改革を実践しています。

 

まずは働き方改革をするための時間づくりとして

  • 各種業務のITシステム導入
  • ノー残業デーの設定と定着

 

働き方改革

  • ふたつ上の上司と直接やりとり
  • 読書習慣
  • 資格取得と行政書士

 

ITシステム導入

 

時間を作るには、まずは業務の圧縮が必要です。

質を落とさず、できれば向上させつつ行わなければなりません。

それにはITシステムの導入がもってこいです。

ですがここにも落とし穴があって、ただシステムだけ入れ替えてもあまり効果はありません。

考えなしのITシステム導入では、逆に混乱が生じます。

地ならしが大事なので、まずは業務標準化、マニュアル化をしました。

システムも使いこなしてなんぼなので、ここは大前提ですね。

経理、ワークフロー、勤怠、給与明細、会議議事録、グループウェア、このあたりの業務のIT化、システム導入に携わりました。

 

ノー残業デー

 

一番ベタなやつですね。

これ自体が働き方改革ではないことは何度も述べましたが、「やればできる」を実感するために手軽な施策ではあります。

 

ちょっと文句はでますが、画一的に「水曜日はノー残業デー」としてみると、みんなそれに合わせて仕事をするもの。

今までは毎日1,2時間の残業は仕方ない、と思い込んでいただけなのです。

「どうせ今日も7時」といった思い込みで、ダラダラと残業をしてしまっている職場は意外と多いと思います。

 

また、帰らなければならない、と考えると、手を動かすだけでなく、どうしたらよいか頭を動かすようにもなります。

 

働き方改革そのものではないものの、きっかけとしてはとてもよい取り組みだと思います。

 

ふたつ上の上司とやりとり

 

ここからは私の働き方改革の取り組みです。

 

「ふたつ上の上司とやりとり」、これは直属の上司を中抜きするわけではありません。

メールなら直属の上司をCCに入れますし、グループウェアならそのプロジェクトのメンバーとして直属の上司がメンバーに入っています。

ちゃんと情報は共有できていることは大前提です。

 

その前提の上で、より上の権限に対してアプローチするのです。

直属の上司へ、そこからまた直属の上司へ、という報告は、ただの伝言ゲームです。

時には大事なことが抜け落ちたり、趣旨が変わってしまうことも…。

 

できる限り上への直接的アプローチは、私自身の意図を、仲介者に変えられることなく伝える手段でもあります。

自分品質を直接お届けできるのがメリットですが、品質が悪い場合にもしっかりとした手直し依頼が来るので、自分の成長にもつながります。

 

ただ、直属の上司と折り合いがつかない場合は、上司は色々と手を加えたがるので、この方法は怒られます。

まずは直属の上司との関係作りありき、ですね。

 

効率と自己成長を同時に追求できる働き方改革です。

 

読書習慣

 

興味の幅を広げ、知識を増やすことは自分の可能性の開拓です。

分からないことが分かるようになる、ということには二つの意味があります。

知識を付けて、理解、実践できるようになる、というのがひとつ。

もう一つは、自分が何を理解できていのかを知ることができるということ。

 

私は読書を通じて、知識が増えたなと思いながら、知らないことがこうも多いのか、これはまだわからない、あれもまだだから身に付けたい、といったふうに、今後知りたい、身に付けたい「今知らないこと」が増えてきました。

 

この「今知らないこと」に優先順位をつけて、日々補充していく。

それがまた仕事に繋がっていく、という働き方改革です。

 

こちらのエントリーも参考に。 

www.co-idealblog.com

 

資格取得と行政書士

 

最後は資格取得と行政書士の複業について。

 

資格取得は読書にも通じるところがありますが、より具体的です。

読書がわからないところを洗い出す作業だとすれば、資格取得はその知識を補充・保管する作業とも言えます。

 

何について、どのような論点があり、こういうやり方がある、と言ったところの網羅性が高く、3級から2級、初級から上級へと進むにつれて、網羅する範囲も広がります。

自分の必要に応じた範囲の資格を取得すれば、その業務の基礎ができたということになります。

これも資格取得が目的化してしまうとダメですね。

あくまで「基礎ができた」だけ。

 

資格取得は、水平、垂直方向のスキル開拓という働き方改革です。

 

行政書士については、まだ実際に業務に取り組めておりません。

ですが、本会、支部会の研修に参加し、先輩方から直接お話を伺うことで、会社での許認可関連の業務についての知識が付きました。

コンプライアンス上、契約書上リスクになる法的な課題なども見えるようになり、実際に提言し、改善にも取り組んでいます。

 

また、行政書士業務としては遺言・相続に興味を持っていますが、会社とは全く違う方面での社会との接点です。

こういった、全く新たな自分の一面を作ることこそ、本質的な働き方改革なのかなと考えております。

 

まとめ的なもの

 

随分と長いエントリーとなってしまいました。

でも、それだけ働き方改革というのは大きなテーマだということ。

 

会社としては、働き方改革は生産性向上を目的としているので、正しく取り組めば業績があがります。

時短によって減った残業代があるならば、会社はベースアップや賞与といった形で従業員に還元できます。

 

個人としては働き方改革の過程で労働量、労働時間が短縮されるので、家庭の時間もつくれますし、新たなスキルや、自分を見つめなおす時間を作ることができます。

これによりなんらかの次の一歩を踏み込めるんじゃないかなとも思います。

 

働き方改革は、今は政府主導のやらされ感が強いですが、しっかり自分事と考えて、自分の芯を持ったうえでこれに乗っかるのであれば、完全な追い風にすることができます。

 

マインドを切り替えて、自律的に、自分事として働き方改革に取り組んでいけるといいですね。

それが働きアリからの脱出にもつながっていくものだと思います。

 

働きアリからの脱出: 個人で始める働き方改革 (単行本)

働きアリからの脱出: 個人で始める働き方改革 (単行本)

 

 

おまけ

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カバーを外してもやはりリアルな働きアリが…(笑)

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