IoT導入で大成功!事例企業の講演に参加しました。
先日、会社の研修の一環として、IoT導入で大成功をおさめ、旭鉄工の社長講演を拝聴いたしました。とてもよいお話でしたので、復習しつつ、お話をご紹介いたします。
二度目の講演会参加。
実は、この旭鉄工社長の講演を聞くのは二度目。
一度お話を聞き感銘を受け、会社の他の方にも聞いてもらいたいと思っていたので、実現して嬉しい限りです。もちろん、偶然でてきた話ではなくて、研修の中に盛り込んでもらえるよう根回しはしておりましたが。
規模は違えど「中小企業」というものにくくられる企業として、我々でもここまでできるということをわかってもらいたかった。
小さい会社だから…田舎の会社だから…技術もないし…下請けだし…。会社の営業、現場部門の方と話していると、自らを卑下するような言葉を吐く人もいらっしゃいます。
そうじゃないでしょ?中小企業だから、この規模感だからできることもある。なにより、どんな企業だって、最初から大企業、上場企業だったわけではない。産声を上げたときは、小規模事業者からのスタートです。
将来会社が発展するかどうかは、今の我々次第なのです。そういうことに気付いてもらいたかったわけです。
IoTはお金をかけず、自前で構築できる。
本講演のテーマですが、エントリーのタイトルの通り、IoTでの成功事例紹介です。秋葉原で購入した数百円のセンサーの組み合わせで、5億円のコスト削減に成功!というのが謳い文句。そう、IoTを自前で構築し、導入してしまったという事例なのです。
そのため、パッケージ導入のように、外見はきれいではありません。すごく手作り感があって、一見、IoTなんて最先端なものには見えないというのが正直なところ。
また、ライン自体もこれに併せて買い替える、という必要はありません。同社では、20年以上前から使用している設備が多くあるとのこと。古い設備をそのまま使用していることも、設備投資抑制に繋がり、大きなコスト削減です。
これらは、IoTの本質を突いていると思います。IoTというと、とても先進的なイメージをもって説明されますが、言ってしまえばモノがネットに繋がっている、というだけの概念。複雑なプログラムにより稼働するといったものではありません。モノがネットに繋がることで、センサーから得られた情報を収集し、分析しやすくなるというだけのこと。 ですから、何も莫大な投資をする必要があるわけではないのです。
パッケージモノは楽に導入できそうに思いますが、お金はかかる、カスタマイズしにくい、ソフトのインターフェースも自社には合わない。これが同社の、自前でIoTを構築するに至った理由だそうです。パッケージモノについてはなるほどと思いますが、じゃあ自前で、という発想は流石ですね。
IoTを導入するにあたり、やったこと。
同社では、自前IoTを構築、導入するにあたり、事前に事後に、いろいろな取り組みをされています。そしてそれは、すべてトップダウンで行っていること。一般従業員の意見を吸い上げる、これはこれで必要なこと。ただ、全社でやっていこう!という号令をだせるのは、やはり会社のトップの役目ですね。意外とこれができる企業は少ないんじゃないかと思います。
私のサラリーマン経験で言えば、トップの言葉はいつもお題目でした。
- 何度だって言う。
- まず自分がやって見せる。
- 出来たら褒める。
こういったことがなければ、従業員には伝わりません。会社のトップ、社長と言ったって、所詮赤の他人なんです。他人が一回さらっと言ったことなんて、簡単に腹落ちするものではない。
山本五十六の言葉「やってみせ、言って聞かせてさせてみて、褒めてやらねば、人は動かじ」、これができる経営者は強いと思うのです。前置きが長くなってしまいましたが、同社では以下のようなことをやったそうです。
IoTを使って、何をしたいのか?
ITツールもそうなのですが、確かに導入すれば生産性は上がります。でも、目的がはっきりしていなければ、効果は薄れていってしまう。この点について同社では、「生産個数を増やす」という目標に絞り込みをかけました。
会社には多くの従業員がいるので沢山の目標を掲げてしまうと、目的がぼやけ、方向がなかなか全体に伝わらない。ですから、目標はしっかりと話し合ったうえで、シンプルに絞り込むのだそうです。
IoTで、いらないデータを取らない。
自動でとれるとなると、いろんなデータを取ってみたくなります。でも、会社の資料を見てみてください。全ての数字をちゃんと役立てているでしょうか?会議で報告してる、というのは、役に立っていることとは違います。
従業員が報告した数字を、誰が、どんなことの為に見ているのか、追いかけているのか。データは報告するためにあるのではない、ということです。
データは簡単に取れるようで、意外とコストもかかります。そのためのセンサー設置、メンテナンス、収集したからにはとりあえずであっても加工する。最初からデータを取らなければ、なんのコスト、工数も発生しません。必要最小限のデータだけあればよいのです。
従業員のモチベ―ションを維持・向上させる。
新たな施策は賛成派ばかりではありません。反対派もいますし、他人事になってしまっている従業員もいるはずです。これらの層を、どのように賛成派にし、積極的にやってくれるようにもっていくかは、リーダーとしての経営者の腕の見せ所。
そこで同社が行ったのは、
- 毎日の現場ミーティング。
- よくできました押印。
- 独断と偏見の社長賞
などです。
ミーティングは基本毎日。せっかく自動化であがってきた数字も、一週間経過してからでは鮮度が失われてしまいます。あの日あの時数値が悪かったのは、何が原因?そう聞かれて、一週間も前のことをどれだけ覚えているでしょうか。経営はスピードが命です。
また、改善結果などを掲示しておくと、木村社長が工場内を見て回った際に、「よくできました」というスタンプを押すのだそうです。こんな小さなことでも、社長が現場を見てくれているというのはうれしいし、モチベーションに繋がるんです。またそれを見た隣の部署も、次は俺が貰うぞとがんばってくれるんだそうです。
社長賞も面白い仕掛けでした。これを貰うと、その個人のところに人が来て、「何をしたのか?」という情報共有がはじまるそうです。ナレッジマネジメントなんていっても、何をすればよいのか、と思われるかもしれませんが、こういった単純なことで、みんな情報を共有し始めるんですね。とてもシンプルなアイデアで、目から鱗でした。
怪我をしない程度に、なんでもやれ。
「怪我をしない程度に何でもやれ」
色々なお話があったなかで、私が従業員の立場として、もっとも言ってもらってうれしい、安心するだろうなと思ったのは、この言葉です。
上司、社長が責任を持ってくれるから、ケツをふいてくれるから、何も心配せずにチャレンジできる。古い企業ほど、チャレンジ精神を忘れ、前例主義に陥ります。そうしてだんだん新しいものを遠ざけてしまい、競争力を失っていく。
そんな時に、「なんでもやれ!」と言ってくれれば、従業員は日々ためていたアイデアを実践しやすくなります。小さなチャレンジに慣れていくことで、だんだん挑戦する風土が出来上がります。
IoT導入、成功の鍵は?
一時間の講演を聞いた中で、私の心に最も響いたのは、実は自前IoTそのものではありませんでした。それは、同社のマインド、会社の風土そのもの。社長が、「やるぞ!」と言って、下に伝えたっきり、深く関与しないというのはよくあること。働き方改革にせよ、IT導入にせよ、この投げっぱなしトップダウンが失敗の最大の要素です。
同社では、社長は現場で一緒になって考えて、従業員のモチベーションをあげるために「よくできました」スタンプを押して、新年の挨拶会などで表彰しています。聞きながら思ったことは、中小企業診断士の2次試験の模範解答そのもの、ということ。もちろん、現実は与件文より奇なり、ですが。
こうやって自ら率先して現場に入り、従業員と膝を付き合わせてアイデアを出すことで、従業員のモチベーションは向上し、社長は孤立せず、組織はうまく回っていく。こうして風通しのよい社風が生まれるのだなと。
今回二度目の講演参加でしたが、やはり本当に良いお話は、二度、三度聞いて、その都度学びがあるなと感じました。
Small Factory 4.0 第四次「町工場」革命を目指せ! IоTの活用により、たった3年で「未来のファクトリー」となった町工場の構想と実践のすべて
- 作者: 木村哲也
- 出版社/メーカー: 三恵社
- 発売日: 2018/08/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る