『劣化するオッサン社会の処方箋』中身までオッサン化、劣化させないために。
NewsPicksの特集と連動した書籍
山口周さんの『劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか』を読みました。この本はNewsPicksの「さよなら、おっさん社会」という特集に加筆修正したものです。NewsPicksの特集はかなりセンセーショナルで、否定されたと感じた年配の方の怒りコメントがかなり多くあったように思います。
特集の中で、一般的な定義とは違う旨は記載ありましたが、有料記事ということもあり、タイトルの「さよならおっさん」という部分だけ見て反応してしまった方も多いのかなと。NewsPicksでは、「年齢や性別は関係なく、新しいことを学ばない、自身をアップデートしなくなった人のこと」という定義付けをしていました。
この特集自体は面白かったですし、おっさんの定義もなるほど、いるいる!と共感できるのですが、それはNewsPicksのユーザーの中にも一定数いるはず。これはユーザーに対する注意喚起の側面もあるのかなと思いますし、特集とはいえ有料ではなく、全編無料で配信したらよかったのになぁと思ったものです。
オッサンの定義
NewsPicksの特集予告編に示された定義は上記の通り、「年齢や性別は関係なく、新しいことを学ばない、自身をアップデートしなくなった人のこと」ですが、山口周さんの定義はより詳細です。
本書から引用します。
- 古い価値観に凝り固まり、新しい価値観を拒否する
- 過去の成功体験に執着し、既得権益を手放さない
- 階層序列の意識が強く、目上の者に媚び、目下の者を軽く見る
- よそ者や異質なものに不寛容で、排他的
いるいる!と思いながらも、自分もズキズキ痛む、という方もいらっしゃるでしょう。そう、この定義から完全に逃れられる人のほうが、少ないのではないかと思います。全て当てはまるという方もまたレアケースかなとは思いますけどね。
また本書では、特にオッサンが多いのは、今の50、60歳代だとしています。70歳代以上は戦後復興、高度成長、ジャパンアズナンバーワンという大きなモノガタリを持っています。逆に40歳代以下の世代は、どん底からのスタートで、新しいモノガタリを持つ世代だとしています。
社会から約束を反故にされた世代
引き算してみると、今50、60歳代の方は、バブルが崩壊した時は20~30歳代となります。バブリーな先輩たちを見て社会に入ったら、全然話が違う!とか、下積みを終えてそろそろ役職もついてブイブイ言わすはずが…、とか、そんな感じでしょうか。
こう言ってしまうと失礼ですが、社会人としてのメインプレーヤーとなるはずの年代のほとんどを、前の世代の失敗の後片付けに費やしたということになります。30歳代でバブルがはじけ、失われた30年を経て60~65歳で定年、ということですから…。
本書でも、以下のように書いています。
~二十代という「社会や人生に向き合う基本態度=人格のOSを確立する重要な時期」を過ごしたのちに、社会からそれを反故にされた世代~
それゆえに、
~社会や会社に対して「約束が違う」という恨みを抱えたとしてもおかしくはありません。
として、世代としての劣化するオッサンを定義しています。もちろん言うまでもないですが、個別に見れば素晴らしいおじ様たちもたくさんいらっしゃいますし、「劣化したオッサン」ばかりだなんて全く思いませんが。
言葉のチョイスがセンセーショナルなので、ざっくり一般化して考えてしまうととんでもなく失礼なことになってしまいますね。
オッサンの生きる道
そんな耳を塞ぎ、目を覆いたくなるような劣化するオッサン論が繰り広げられる本書ですが、ただのオッサン叩きで終わるわけではありません。それではただの批判でしかないですからね。
オッサンたちは知識も経験も、若い人たちよりも多くしています。それを活かしつつ、オッサンの定義に当てはまらない、つまり逆を行けばいいわけです。多くのオッサンはそれなりの役職についていることも多いでしょうから、サーバントリーダーシップを発揮してチームを支えるのがよい、と提案しています。
サーバントリーダーシップとは
昔ながらのリーダーシップは、ピラミッド型のヒエラルキーの頂点にいる、支配的な リーダーシップです。これに対してサーバントリーダーシップは、メンバーを下から支える逆三角形のイメージ図で示されることが多いですね。
チームの主役はリーダーではなく、メンバーです。このメンバー個々の力を最大限に引き出し、活かしてあげるのがサーバントリーダーシップです。
まとめ的なもの
タイトルは一種の炎上商法じゃないかと思えるくらいわかりやすく批判的なのですが、ただの否定に終始したような本ではありません。劣化するオッサンとはいっても年齢の問題ではなく、凝り固まった考え、学ばない姿勢にたいする警鐘を旨とする内容だとわかれば、受け入れられる内容でしょう。
健康面でのアンチエイジングは以前から人気のある市場ですが、リカレント教育や生涯学習といった知性面でのアンチエイジングも、積極的に行っていかなくてはいけませんね。
劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか (光文社新書)
- 作者: 山口周
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2018/09/13
- メディア: 新書
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