「部下が上司をサポートする」という古から伝わるサラリーマンあるある(ただし大間違い)。
サラリーマン人生に思わぬ人事はつきものです。
先日、私の上司である課長がグループ子会社への出向が決まりました。
今日はその経緯と、その後に常務から言われた「上司をしっかりサポートするように」という言葉に対する私見をつらつらと、書いていきます。
ことのおこり
まずはことのおこりから。
今回課長が出向を命じられたグループ子会社で昨年、総務経理部門で将来を担うはずだった方が、諸事情により退職してしまいました。
そして、その方に引き継いで定年退職するつもりだった現在の部長も、引き継ぐ相手がいないのでやめるにやめられず、延長してもらっている状況です。
そんな現状を打破するために、今回の人事が決定しました。
ただ、急場しのぎの穴埋めというわけではなく、課長の今後のキャリアを考えて、一旦グループ子会社で部長を、ということらしいです。
では残された我々はというところが一番気になるところですが、「出向」を聞いた瞬間に、私の中で組織図が組み替えられました。
私が上に!!というのが私の野望ですが、今年係長になったばかりですので、昇格条件を満たしておりません。
横を見れば、同じ係長に就いてから数年経過している10歳も上の先輩がいます。
まぁ現在の諸規程に従えば、先輩が上がるしか選択肢はありません。
そして案の定、「これからは君に課をマネジメントしてもらいます」と、部長兼任の常務からのお言葉。
その場では「課長」という役職は出ませんでしたが、その後常務とサシで飲みに行き、根掘り葉掘り聞きだしました。
先輩は課長にはならないが、課長代理になるとのこと。
代理といっても、本当の課長や、課の長となる人物が他にいるわけではないので、実質課長です。
さらに色々と聞きましたが、現在一つの部、一つの課で総務、経理、法務等を行っているところを、将来的には分業させて一翼を私に任せたいとのこと。
ですので、先輩がさらに上にあがるまで忍び難きを忍ばなければならないのかといえば、そうでもないようです。
ただ、一時的ではあれ、先輩が私の上司になり、その下で仕事をするということになります。
これはかなり私の心をザワつかせました。
私の上司になる先輩とは…
というのもこの先輩、課内外からかなり顰蹙を買っている方なのです。
すぐにマウントをとる、自分で考えずに1から10まで聞いてくる、「上司の指示なので」ならまだしも「○○さん(部下)が言ったので」と、自分で責任を負わない、などなど。
最近では後輩である私にまで1から10まで聞いてくる始末。
私以外の課員もかなり不安に思っていて、珍しく定時後にぶちまけられました。
先輩と一番長く仕事をしている方からは「異動願いだそうかな…」とも…。
常務とのサシ飲みの際にも、そういった諸事情は知っていますよね?と聞くと、やはり不安がっていました。
規程に従えば、課長というポジションに就ける人は先輩しかいません。
子会社のどたばたがあって、急な人事やむなしというのも理解できます。
一方で、課長が子会社に行けばグループ間連携もとりやすくなるので、その意味ではワクワクしています。
でも、残された我々の社内の立場と課としての歩みのスピードは…どうなのか…。
上司はサポートされる側なのか?
そのような私と課員の不安を常務にぶちまけると、「まぁ、上司となる彼をサポートしてあげてくれ~」と投げ返されました。
その球はその場で打ち返したのですが、酔いも覚めて、改めて考えれば考えるほどに、「上司をサポート」ってなんだよという思いがこみ上げてきました。
そもそも、私は上司をサポートしたことなんて、ほとんど記憶にありません。
私のやっていることが結果的に上司をサポートすることに繋がっていることはあるでしょう。
でも、支えようとしてサポートしたということはほぼないと思います。
私自身、上司はサポートするものだと思っていないからです。
だってそうでしょう?
実際に手を動かしているのが誰なのかを考えてください。
実働部隊、兵隊はいつだって末端に決まっています。
その事業、業務の顔になってくるのは末端で手を動かしている人たちなのです。
やることは上から降ってきますが、それを意味付けして、課員をモチベートして、成果を出せる環境を諸々そろえてあげるのが上司の役目。
ここで使い古された話をひとつ。
課長、管理職は英語で"Maneger"ですが、これは動詞の"Manege"からきています。
"Manage"には「経営する」という意味もありますが、辞書では「どうにかする、なんとかする」という意味のほうが先に来ます。
つまり上司の仕事はプレイングする人たちをマネッジすることなんです。
課をマネッジするということは、課員をマネッジすることもあれば、課員のボトルネックをマネッジすることもあるでしょう。
課員が走っているそばで、転ばないように石を取り除いたり、水を差しだしたり、順路を指し示すのです。
そう考えると、上司と部下、どちらがサポートでしょうか。
もちろん、サポートするのは上司、マネージャーですね。
部下をサポートするのが上司の役目
組織のヒエラルキーとしては、主任、係長、課長と、上に行くほどに権限を持ち、いわゆる「偉い人」となっていきます。
ただ、役回りとしてはサポートが主となっていきます。
私はずっとそのような考え方で、「上司は使うもの」を公言してきました。
こちらのエントリーでも軽く触れていますね。
「使う」といっても、雑用を頼むというわけではなく、私が仕事をする上でボトルネックとなる他部署との橋渡しや権限委譲や上申の権威付けを「よろしくお願いします!」ということです。
今までの課長もそうだし、常務にも普段からそのようなお願いをどんどん投げて、そして地ならしをしていただきました。
そのことは常々感謝の念に堪えませんし、それゆえにこれから私の上司となる先輩に対する不安が絶えないのです…。
数字の管理はただの成績表
ちなみに、管理職というと数字を管理するというのも仕事の一つです。
中にはこれを主だと思い違いしている方もいるのかもしれませんが、数字の管理はマネッジの進捗と結果を表す成績表です。
マネッジした結果の数字だからこそ、管理職である課長の成績になるのです。
課員のボトルネックを取り除いてあげることで、課員はより多くのスループットを生み出してくれます。
そうして予算大幅超過達成となり、成績表はオールAに近づきます。
逆にゴールから考えれば、オールAを目指してどうマネッジしていくのかを考えるのがマネージャーの仕事ということになりますね。
サーバントリーダーシップ
私は昔から「上司は使うもの」と思ってきましたが、そういった考え方(厳密には違いますが)は、もう何十年も前から体系化されているようです。
『サーバントリーダーシップ』という本が1977年に書かれています。
日本では2008年に翻訳されており、組織人事のビジネス書を読むと、『サーバントリーダーシップ』や著者であるグリーンリーフの名前が度々出てきます。
このブログの他のエントリーでも、何度か出てきた言葉ですね。
その他、講演会などでも耳にしますし、現代にもっとも求められるリーダーシップ像ということなのでしょう。
上司のサポートで現場はスムーズに動きだす。
そもそも、ですが、部下がやっていることというのはなんなのでしょうか。
どんどん川上へと遡っていくと、そこには社長のビジョンやミッション、理念があるはずです。
それがタテマエでもオダイモクであっても、どんな会社にも一応はあるはずです。
それに沿って(これもタテマエということもありますが)事業領域が決められ、AsIs-ToBeのギャップが認識され、埋めるための中長期計画が組まれ、年度、月次計画となり、日々の行動に落とし込まれます。
抽象的だったビジョンが具体的な行動になるにつれ、社長から取締役、部長、課長、係長、主任へと責任も降りてきます。
そうして細分化された業務を、末端、部下がこなしていくことになります。
社長がどれだけのビジョンを持っていても、末端が動いてくれなければなんにもなりません。
だからヒエラルキーの頂点にいる社長が、マネッジしていくことになります。
もちろん、その役職ごとでマネッジの方法は異なるので、社長と課長がやることも当然異なります。
それでも、「サポートする」ということは変わりません。
社長は自分のビジョンを達成するために、従業員を雇いますが、オフィスやパソコンや設備がなければ、従業員は働けません。
また、従業員が生活に不安を抱かずに働けるように給料も払わなければなりません。
社長はヒト・モノ・カネといったリソースをマネッジすることで会社をサポートしますが、このヒト・モノ・カネも、細分化されて部長の裁量、課長の裁量へと振り分けられます。
この振り分けられた裁量を奮って、さらに下、現場の人たちをマネッジすることになります。
つまりは上司が現場をサポートして、さらに上、またさらに上の上司がそれぞれサポートすることで、末端である現場はスムーズに動きだすのです。
ほとんど持論ですが、私のサラリーマン哲学です。
「上司は使うもの」
「上司は部下をサポートする」
まとめ的なもの
もう一度言いますが、私の持論です。
べき論で語るつもりもありませんし、組織の段階や文化が違えば、それぞれに合った「あり方」があると思います。
私もやっと考課者となり、課員の目標を定めるようなポジションになりました。
これをやってほしいとお願いしつつ、一言、いつでも相談にのるし、上司は使ってよと伝えています。
一回目では「そうはいっても…」と思われるかもしれません。
今後の面談のたびに、そういった雰囲気を醸成し、関係性を作っていくのが係長の仕事です。
一般的にはマネージャーというのは管理職、課長級以上を指します。
ただ、現在の役職に応じたマネッジのあり方については、常に考えていく必要があります。
それはもちろん、将来を見据えて、という意味もあります。
ひょんなことがきっかけで、このようなことを改めて考えることになりました。
でも、やはり書くと考えがまとまるものです。
私に「上司のサポートをしろ」と言うのなら、上司となる先輩が部下をサポートできるように導いていくことが、私にできるサポートかなと思いました。
もしそれでも部下をサポートできない上司であったなら、その時は下剋上、戦国時代の幕開けですね。
それがひいては課員をサポートすることに繋がるのであれば、下剋上やむなしです。
下剋上…めっちゃ面白そう…(笑)。
さて、どうなることやら。
- 作者: ロバート・K・グリーンリーフ,ラリー・C・スピアーズ,金井壽宏,金井真弓
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