サラリーマン行政書士の読書日記

本ブログは、サラリーマン行政書士である私が、本業、副業、中小企業診断士に挑戦若しくは奮闘する様及び読書記録を綴るブログです。



『シェアライフ』新しい経済と社会のつながり方。

NewsPicksの動画コンテンツ、WEEKLY OCHIAIでMCを務める石山アンジュさんの著書、『シェアライフ 新しい社会の新しい生き方』を読みました。

シェアという思想

タイトル副題にもある通り、シェアという概念は新しい社会の到来を感じさせます。

Uber、airbnbなどはシェアリングエコノミー企業としてもはや知らない人はいないのではというまでになりましたし、中国でも滴滴出行などが追いつき追い越せの勢いで成長しています。

そんな今話題のシェアリングエコノミーですが、本書は経済の話だけではなく、シェアライフとして、社会と生き方まで含めた重要な概念としてシェアを捉えています。

著者である石山アンジュさんが本書で伝えようとしているのは、シェアを用いたビジネストレンドはなく、シェアという概念の根底にある思想なのです。

本当に失われた30年だったのか

「はじめに」で、アンジュさんは読み手に投げかけます。

「失われた30年、本当にそうだったか?」と。

振り返ってみると、平成という時代はバブル崩壊から始まり、デフレ、リーマンショック、超高齢化社会、人口オーナス期、度重なる自然災害、数え上げたらきりがないほどネガティブキーワードが挙がる時代でした。

だから、平成は失われた30年だった…というのが世間一般の論調です。

たしかに経済環境は厳しい状況が長らく続いていましたが、我々の生活は経済活動が全てではありません。

スポーツではイチローや真央ちゃん、大坂なおみ、他にも数えきれないほど多くのスポーツ選手が活躍し、日本のレベルの高さを世界に見せつけ、大いに盛り上がりました。

映画でもカンヌのパルムドールを2作品が受賞していますし、世界の北野も多くの映画を輩出してきました。

何が言いたいかというと、ネガティブな側面ばかり見ていませんか?ということ。

また、社会が大きく変化して色々なものの価値が変わってきているのに、我々の方がその価値に気付けていないのではないか?ということ。

モノが無い時代から有り余る時代へ

戦後、日本は一からのスタートを余儀なくされました。

それが戦後たった20年で高度経済成長という時代へ、そしてジャパンアズナンバーワンと言われるまで上り詰めました。

高度経済成長を終え、バブルが崩壊し、経済が大打撃を受けたあとも、モノが無くて困るということはなく、現代はモノ余り・飽食の時代です。

大家族から核家族、そしておひとりさまへ

経済が成長するにつれ、就職で東京へ、逆に地方へと転勤することが当たり前になり、家族は大家族から核家族化し、さらに今ではおひとりさま社会になっています。

よいかどうかという問題ではなく、我々のライフスタイルは大きく変わってきているということが現実としてあります。

人の流動性が高まり、昔のように地域に根ざしたコミュニティは減っています。

皆さんの周りをみても、隣近所でも知らない、挨拶しないという人が増えたのではないでしょうか。

本書でも孤独死の増加を指摘していますし、つながりが希薄な時代になってきていると言えます。

新しい価値観

モノ余りの時代、つながりの希薄化、これらのことから新しい価値観が見えてきます。

みんなモノを持っている時代なのだから、「個人所有」にはもはや価値はないのではないか。

家族の団欒というつながりが希薄になったのなら、血縁以外のつながりに価値を見いだせるのではないか。

こうしてこれまでの価値観に縛られることをやめれば、自ずと道は見えてきます。

失われた30年というのは、社会の変化に適応できていなかっただけのことなのかもしれませんね。

シェアライフが日本の問題を解決する

本書では「私たちにとっての幸せを再定義」する必要性を説き、その解決にはシェアというキーワードが欠かせないと言います。

まずは所有するという縛りからの解放です。

これまでは家も車も音楽もなんでも、「買う」という手段が主流でしたし、ほとんどそれしか選択肢はありませんでした。

今では、冒頭に挙げたようなライドシェア、シェアハウスといったサービスがあります。

車のシェアリングエコノミー

以前に読んでエントリーもした本に『MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ』があります。

www.co-idealblog.com

この本の中で、考えれば当たり前でありつつも衝撃だった「4%」という数字があります。

これは、我々が決して少なくないお金を払って、あるいはローンを組んで購入した車の平均的な利用率です。

多くの人は平日は通勤のためにしかマイカーを使いません。

30分を、往復で1時間の利用ですが、1日は24時間あります。

1時間÷24時間=約4%、となります。

そういうものだと言えばそういうものですが、これってとてももったいなくないですか?

1日のうち約96%の時間は、車は駐車場で止まっているだけなのです。

この残念な当たり前を打ち砕くのが、シェアという概念です。

日本ではまだまだ法律などの整備が追いついていませんが、個人が車をシェアできるようになるのも時間の問題でしょう。

社会とつながるシェアもある

著者の石山アンジュさんは今、シェアハウスで暮らしているそうです。

これは「つながりの希薄化」を解決するもののひとつですね。

現代はおひとりさまの多い社会ですが、それでも本当に一人なのは寂しい…人が嫌いなわけではない…という人がほとんどなはず。

個人を尊重しつつ、緩やかに繋がっていたいというニーズが強まってきているのでしょう。

みんなで少額の組合費を出し合い、それでシェアハウスを管理・維持しているのだそうです。

これって、長屋とか町内会のようなものですよね。

血縁もなく、同郷というわけでもないですが、それでもしっかりと繋がっている。

醤油を貸し借りし合うようなお互い様社会というようなことも書かれていましたが、なるほどと思います。

2つのシェア

書中、Uberやairbnb、シェアハウスやクラウドワークスなどなど、いくつものシェアサービスの実例が示されますが、だんだんとこれらの間に違いがあることに気付きます。

いずれもシェアリングエコノミーには違いのに、なぜなのか。

そう思いながら読み進めていくと、著者からその答えが提示されるのです。

それが、シェアの資本主義型と持続可能型というものです。

資本主義型のシェア

これまでの資本主義経済は、たくさん作ってたくさん売ることで、富を拡大してきました。

モノがあふれる現代になって、マーケティングも製品志向から顧客志向へと変わってきています。

そうした中で生まれたのがUberやairbnbのようなシェアリングエコノミーです。

インターネットというイノベーティブなインフラの誕生は、CtoCのプラットフォームが生まれるきっかけとなりました。

プラットフォームはネットワーク外部性により、ユーザーが増えれば増えるほど利便性が向上します。

そのため、様々な企業がサービスを展開するよりも、一極集中したほうがユーザーもメリットが生まれます。

これが資本主義型のシェアです。

これまでの資本主義も競争社会ではありましたが、シェアリングエコノミー、プラットフォームの資本主義経済は、より独占化が進みます。

持続可能型のシェア 

もう一方の持続可能型のシェアは、まったく異なる印象を受けます。

持続可能型という言葉からも雰囲気が伝わってきますが、経済というよりは社会生活におけるシェアです。 

シェアハウスのように「人とつながる」ことを目的とし、必ずしもビジネス的な成功を目的としているわけではありません。

持続可能型のシェアはコミュニティ中心で、心を満たすためのシェアなのでしょう。

新しい価値観に従って幸福感を高めるためのシェアで、著者が力を入れているのはこちらのシェアのように感じます。

書中、北海道天塩町で誕生したnottecoというライドシェアサービスを紹介していましたが、まさに資本主義型と持続可能型の対比にふさわしいサービスですね。

人口3,200人という過疎地域で、自治体を巻き込んで買い物弱者をなくそうという地域密着型のライドシェアサービス。

資本主義型ではスケールさせるビジネスモデルでしたが、こちらはその真逆の地域密着ですし、規模の経済が働きにくい構造です。

ビジネスとして大きくするという目論見ではないのでスケーラビリティは必要なく、これで必要十分なのです。

このシェアサービスは、近代に入り欧米的資本主義の価値観が入ってきて失われつつあった、日本の「長屋」、「お互い様」という原風景を根底に持つサービスのようにも感じますね。

また、過疎化する地域では地方自治がなかなか難しい面があったように思いますが、新しいテクノロジーやシェアリングエコノミーといった手段を用いることで、古き良き日本人の精神を保ったまま、自立した地方が存続していく道も見えてきたのではないでしょうか。

まとめ的なもの

正直なところ、「はじめに」でシェアという思想について書かれているのを読んで、「具体例少なめのライトな内容かな?」と思ってしまいました。

ところが読んでみると、しっかりと問題提起、課題設定がなされ、テーマであるシェアにより解決に結びついています。

具体的な企業やサービスにフォーカスしたビジネス書も面白いですが、本書のように思想面にフォーカスした著書は、読んだ後で自分の中に広がりが生まれますね。

この『シェアライフ』という思想概念を、自身の生活のどこに当てはめられるのかと思いを巡らせます。

また、これまで持っていた価値観を見直すきっかけにもなりますよね。

いまの経済と社会を担ってきたもの、これからの経済と社会を担っていくもの。

所有からサービスへという表面上の変化だけを追うのではなくて、なぜ今そのようなパラダイムシフトが起きているのか、根底にあるものについて考えさせられる良書でした。

シェアライフ 新しい社会の新しい生き方

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