『MaaS』モビリティ革命による社会デザインの実現へ。
『MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ』読み終えました。
自動車の未来のお話でしょうか?いえ、「移動手段」の未来のお話です。
そしてMaaSを活かすためのスマートシティのお話です。
オビには「マイカー半減!トヨタはどう生きるのか?」とありますが、自動車メーカーだけではなく、鉄道会社、バス会社など、移動を製品として、サービスとして提供する企業すべてが、このMaaSの対象となります。
ただ、本書ではさらにその先、モビリティ革命の先にある「全産業」のゲームチェンジを見据えています。
書籍の裏表紙にも「Beyond MaaS ーMaaSの、その先へー」と書かれています。
つまり、移動を中心に据えた、これからの社会のデザインを描いた本というわけです。
これは面白い。売れるわけです(笑)。
Mission to MaaS
映画『ミッション・トゥ・マーズ』に引っ掛けて、これが言いたかった。
映画の内容はあまり覚えていませんが…。
冗談はさておき、まずは本書タイトルにもなっている「MaaS」というものがどんなもので、何を目指しているものなのかを説明します。
MaaSとは何か
MaaSとは、Mobility as a Serviceの頭文字をとったもの。
直訳すると「サービスとしての可動性」となります。
なんのこっちゃですね。
MaaSというキーワード、やはりトヨタと結びつけて考えてしまいます。
なぜならトヨタの豊田章男社長の発言があるからです。
私は、トヨタを「自動車をつくる会社」から、「モビリティカンパニー」にモデルチェンジすることを決断しました。
このメッセージは年始に、販売店を通してうちの会社にも届きました。
直接MaaSという言葉は使っていませんが、今はモビリティというキーワードでトヨタを想起し、そのままMaaSもトヨタと繋げて考えてしまいます。
もう一つ、「CASE」もそうですね。
「電動化」「自動化」「コネクティッド」「シェアリング」などの技術革新は急速に進み、新しい競争ルールで、新しいライバルたちと、「勝つか負けるか」ではなく、「生きるか死ぬか」の闘いが始まっています。
これも上のリンクにある社長メッセージの中の一文です。
CASEについては『CASE革命 2030年の自動車産業』という本が出ていて、ブックタワーに積まれているので、また読み終えたらエントリーしますね。
トヨタが引き合いに出されるのは、日本の自動車業界のリーディングカンパニーであり、MaaSを考える中で中心的な役割を期待されているから。
だからMaaSとはなんなんだ、という話に立ち返って考えましょう。
トヨタはこれまでは車というモノを提供する企業でしたが、「どのように目的地に行くか」という目的を果たすための「サービス」を提供する企業に生まれ変わろうとしている、ということです。
もちろん、トヨタだけでなく、あらゆる移動手段を提供してきた企業が、MaaSという概念を基に、ビジネスモデルを変革していくことになります。
MaaSは何を目指しているのか
ではMaaSは一体何を目指しているのでしょうか。
MaaSでは、車単体でなく、電車単体でもなく、移動というものを包括的に捉えています。
これはニーズのお話ですね。「消費者に何が欲しいか聞けば、もっと速く走る馬車が欲しいと言うだろう」というようなことを、フォードは語っています。
その当時はまだ車は一般的ではなかったので、車ではなく、速く走る馬車を欲したというのは納得です。
これはその時代の消費者のニーズを、フォードがくみ取ったという例です。
今でいえばどうでしょう。様々なテクノロジーが発達した現代で、消費者の移動ニーズをどのようにビジネスにするか。
そう考えたとき、やはり思い浮かべるのがインターネット。
この全てのモノと情報を繋げるテクノロジーによって、Door to Doorのトータルソリューションを実現しよう、というのがMaaSです。
as a Service全盛時代
話を少し戻しますが、as a Serviceという言葉、よく耳にしますよね?
最も有名なものはSaaSではないでしょうか。
Software as a Serviceです。
Office365、Gmail、DropboxなどがSaaSの典型です。
IaaSというものもあって、これはInfrastructure as a Serviceですね。
AmazonのAWSやマイクロソフトのAzureなどがあります。
違いが分かりますでしょうか…。
SaaSはソフトの利用をサービスとして受け取っています。
IaaSはサーバ機能というインフラを、サービスとして受け、そこに自社のソフトを載せて、顧客に提供したりしています。
他には何があるだろうとアルファベット順に検索してみると、ほんとにわんさかありますね。
as a Service全盛時代です。
これはどういうことかというと、モノからコトへ、という流れ。
シーズ志向からニーズ志向、ひいては製品志向から顧客志向という流れとも言えます。
「サブスク」「プラットフォーム」「XaaS」
as a Service、長いのでここからはXaaSと言いますね。
このXaaSにせよ、プラットフォームにせよ 、全てはある一つのテクノロジーがあって初めて成り立ちます。
それはインターネットです。
サブスクリプションモデルも同様に、インターネットがあって生まれた概念です。
インターネットを一過性のものと考えている人は、もはやこの世にいないと思います。
でも、ITバブルがはじけた2001年頃は、まだインターネットに対して懐疑的な人も多かったようです。
今でも、スマホは使うけど、AmazonなどのECサイトを含め、ネット上で個人情報は絶対に入力しないという人は見かけますね。
これまでの最新テクノロジーはモノであったため、見えない、触れられないインターネット上で動くものは、信用できないんでしょうね。
何となく気持ちはわかりますが、個人的には、それだけで毛嫌いするのは勿体ない気がします。
いずれにせよ、インターネットが、今の、そしてこれからの我々にとって基盤となるテクノロジーであることは間違いありませんね。
MaaSをはじめ、様々なモノがサービスとしてプラットフォーム上で提供されるようになり、そこにはいつも、サブスクリプションがくっついてきます。
たどっていけば、そこにはSDGsが
MaaSの経緯や目的をたどっていくと、そこにはSDGsがあるように思います。
SDGsとは、Sustainable Development Goalsの頭文字をとったもの。
持続可能な開発目標のことです。
なんだか今日は横文字ばかりですね(笑)。
持続可能な未来を実現するために17のゴールが設定されており、その中にはエネルギーや、気候変動や、住みやすい街づくりについて書かれたものもあります。
MaaSが注目され始めた経緯の一つに、街の渋滞、交通安全、街の再開発、過疎地域の交通弱者などの問題があるので、企業のMaaS化が進めば進むほど、SDGsの目標に近付いていくのではないでしょうか。
MaaSは公共性、社会性の高い概念だと感じますね。
モノから人中心の社会へ
別の側面、車の技術向上という側面からも見てみましょう。
車のEV化が進んで、自動運転のレベル5が完成したとしても、これは車という一工業品の進歩にしか過ぎません。
もちろん便利になることは容易に想像ができますが、あくまで「車」の進歩であって、イノベーションと呼べるものではありません。
ですが、マイカー、公共交通機関、タクシー、さらには自転車まで、あらゆる移動手段を包括的に統合されたなら、まだ自動運転がレベル3の段階だとしても、これはイノベーションと呼べるものでしょう。
イノベーションは日本では技術革新と誤訳されがちですが、本来は新結合、新機軸という意味です。意外な組み合わせによる新たな機軸、MaaSはまさにイノベーションの塊です。
本来車というものは、多くの人には移動することが本質的な目的のはずです。
それが「運転する歓び、楽しみ」という売り文句をなんら疑わずに受け入れてきました。
それは車というモノを中心とした発想ではないでしょうか。
MaaSで実現されるのは、本質に立ち返って、「いつ、どこへ行きたいのか」という人のニーズを中心に据えた社会です。
移動という手段、目的までのプロセスの部分で悩まなくてもよくなる社会です。
まとめ的なもの
大好きなテクノロジー系の本なので、一気に読んでしまいました。
図や写真も多く、楽しんで読むことができました。また、MaaSカオスマップという、MaaS事業者を総覧できるものまでついていて、企業の勢力図としてもわかりやすいものになっています。
そして冒頭にも書いた通り、裏表紙には「Beyond MaaSーMaaSの、その先へー」と記されています。
現段階では、移動に関する企業と、ソフトバンクのような通信事業者がMaaSの中心です。
でも、MaaSにはその先があって、あらゆる業界がMaaSと接点を持ち、自らもMaaS事業者になるのだと言います。
カオスマップには、介護、観光、農業などが挙げられていますが、想像に難くありませんよね?
施設までの移動、観光地間の移動、収穫したモノの移動。
人がいれば移動が生じます。あらゆるものが、MaaSとは切っても切れない関係にあるのです。
これは、MaaSだけにまーすます楽しみな未来ですね。
冗談ばかりのエントリーですが、MaaSは冗談ではありません。
モビリティ革命の先にあるという全産業のゲームチェンジ、それに乗り遅れないよう、未来を見据えながら目の前の仕事に取り組みましょう。