行政書士業務、入管手続の基本を整理してみます。
最近少しずつ進めていた入管手続、国際業務の勉強ですが、一区切りつきましたので、整理してみたいと思います。本当に基礎の基礎の部分ですが、基礎を疎かにしては実務は成り立ちませんので、入管手続一巡、整理します。
入管手続基本の整理のその前に、ピンクカード取得までの経緯や申請取次事務研修会への参加、ピンクカード取得に関してのエントリーも、お読みいただければと思います(笑)
それでは本題、入管手続の整理へいってみましょう。
入管手続き、学びのタネは。
要するに教材、テキストです。『第5版 よくわかる入管手続―基礎知識・申請実務と相談事例―』を使って学びました。このテキストは以前のエントリーの中でも紹介したものです。
より専門的なもの、辞書代わりにも使える重厚感のあるもの、いろいろあります。ですが、入管業務初学者として、まずはここからスタートしたいと思います。いきなり躓くことを避けるには、身の丈にあったところからスタートすることが大切。結局はそれが目的への最短距離だったりしますしね。
なにより、この書籍も第5版なので、入管業務をこれから学ぼうという方に、長らく愛され利用されてきた書籍です。初版は平成13年ですから、15年以上かけて、入管法やその他法令の改正に対応しつつ、中身も洗練されてきているに違いありません。
行政書士としてできること。
この入管手続という業務ですが、他の許認可申請などと同じく、本人申請が原則。
それを、申請取次制度を利用することで、本人以外の者が取次を行えるようになります。
申請取次制度を利用すれば、これから日本に来る外国人、現在日本で学校に行ったり働いたりしている外国人も、本業、学業に集中することができます。また入管窓口としても、専門化が書類を作成して持ってきてくれれば、業務がスムーズになるというものです。
申請取次制度の注意点としては、「取次」であって「代理」ではないということ。
両者の違いは、書類の記載に不備があった場合でも、取次である行政書士には修正することはできないという点です。
ですので、入管に持ち込むまでがこの業務の正念場。書類をしっかりと揃え、見直しておく必要があります。もちろん、書類作成の際の見直しは当たり前なんですけどね。
さてこの申請取次、行政書士のみに許された独占業務ではありません。他に誰ができるのでしょうか。
- 受入れ機関の職員
- 旅行業者
- 公益法人の職員
- 弁護士又は行政書士
上記の内、申請取次を認められたもの、届出済証明書を交付されたものが対象です。
この中で、1、2は申請できる手続は限られています。
3、4は、下記手続の取次がすべて可能となります。
- 在留資格認定証明書の交付
- 資格外活動の許可
- 在留資格の取得、更新、変更
- 在留資格取得による永住許可
- 在留資格変更による永住許可
- 再入国の許可
- 就労資格証明書の交付
- 申請内容の変更申出
上記一覧を見るだけで、入管業務の責任の重大さが伝わってきますね。もし申請が不許可なら、最悪国外退去もあり得えます。それだけに、入管業務は責任重大なのです。
ビザとは?在留資格とは?入管手続の用語を正しく使う。
言葉の定義についても、法律や制度を学ぶ際は最初に見ておくべき事項。ネット上で調べていると、行政書士の先生でも在留資格のことをビザと言っていることがあります。もちろん両者の違いを知らないわけはないので、依頼者の方に合わせて言葉を使っているのだと思いますが。
初学者だからこそ、言葉、用語の定義にこだわる。
初学者としては、ビザと在留資格の違いをはっきり理解しておかないと、後で大変なことになります。相手に正しく教えてあげるというのではなくて、違いをちゃんと知ったうえで、依頼者に合わせて上がる必要があります。
外務省のHPを見てみると、「俗にいうビザの切り替えとは~在留資格変更に相当する~」なんて記載があります。外務省がわざわざ注記するほど、在留資格をビザと呼ぶことが一般化してしまっているようです。
そういえば昨日のテレビ番組内でも、池上彰さんが、「観光ビザ」、「留学ビザ」と言ってました。いつもの池上さんなら、「皆さんが普段ビザと呼んでいるものは~、実は在留資格のことなんですねぇ」なんて言って「へぇ~」ってなるところなのに。池上さんが間違えるくらいなので、この間違いは相当に一般に浸透しているようですね。
本書では、○○とは?××とは?という形で、入管手続ででてくる様々な言葉の定義について、多くのページを割いて説明してくれています。ここでしっかりと入管手続きの基礎知識を身に付け、違いのわかる専門家になりたいところ。
ビザ以外にも、様々な聞きなれない言葉、似たような言葉が飛び交います。こういった初学者が悩みがちな部分を手厚くサポートしてくれる本書は、本当にありがたい実務入門書です。
さて、用語、言葉の定義を見ていくうえで、私が最初に躓いたのは、上陸審査周辺でした。ですので、ざっくりですが、このあたりの手続を整理してみましょう。
まず旅券(パスポート)とは、国が発行する身元証明書です。旅券だけをもって、上陸したり留学、就労できるというものではありません。ビザ取得、在留資格取得、上陸許可取得、これら全ての提出が必要になります。旅券は身元証明書ということですから、その大切さについては言わずもがな。ただ、申請においてはいくつか提出する重要書類のうちの一つだと覚えておきましょう。
ビザ(査証)とは、旅券を持ったものが日本に入国しても問題ないことを証明する印証です。上陸審査の際にこのビザを確認され、上陸許可が与えられた時点で、ビザは使用済みとなります。数次ビザというものもあるのですが、ひとまずは、上陸許可を得るまでのものと理解してよいでしょう。
このことからも、日本国内にいる外国人がビザ(査証)の変更、延長を依頼してくる、というのがおかしなことだとわかりますね。依頼者との会話では「ビザ」と言いつつも、専門家たる行政書士の頭の中では、ちゃんと査証と在留資格を分けて考えなければなりません。
入管業務を行うにあたっては、当然にその違いを理解したうえで脳内変換して業務に当たらなければなりませんね。これらは慣れてしまえばどうということはないのかもしれませんが、実際の書類、資料を取り扱ってみるまでは、複雑でイメージがし辛いように感じました。
入管手続一巡。
これから日本に来たいという方、既に日本にいて、在留資格を変更したいという方、延長したいという方。入管手続には色々なパターンが想定されますね。
入国時の入管手続
ひとつ前で整理した上陸申請⇒パスポート・ビザの確認⇒上陸許可、というのも手続きの一部ですが、その前に在留資格認定証明書を取得する必要があります。この在留資格認定証明書は、日本国内にいる行政書士などに依頼し、日本国の法務大臣より交付を受けます。在外公館での査証申請時にこの証明書を提出することで、早期にビザが発給されるという制度です。
この在留資格認定証明書なしで、いきなり在外公館へ査証申請することも可能ですが、時間がかかるのであまり利用されていないとのこと。そんなこともある、程度に覚えておけばよいでしょうか。
これでビザが発給されましたので、いざ日本へ。そして上記の上陸審査、許可を経て、無事日本に滞在することができます。
また、3ヵ月以下、短期滞在、外交・公用以外で日本に在留される方は、入国後の市区町村への住居地の届出のあと、その住居地宛に「在留カード」が送られてきます。ただし、新千歳、成田、羽田、中部、関西、広島及び福岡空港については、上陸許可の際にこの在留カードが発行されるようです。まぁ上記7空港での上陸が大半だと思うので、通常はその場でもらえるよと考えておけばよいと思います。
入国後の入管手続
入国後の入管手続としては、在留資格の変更、在留資格の更新が主なところでしょうか。この二つは、申請者も日本にいるということなので、会って話して、書類も随時確認しながら集めていくことができるので、在留資格認定証明書の交付に比べると、気持ちは楽なのかなと。
ただやっかいなのは、在留資格を得て日本に滞在しているものの、もしかすると学校をやめてしまったり、仕事を辞めてしまったりして、資格外となる活動をしてしまっているということも現実には考えられます。
そうすると、その間何をしていたのかが争点になり、それを証明する書類だとか、追加書類を要求されるようです。実際にどのような書類が必要になるのかというのは、おそらく経験がものをいうのでしょうね。 実際の実務に携わるまでは、そうらしいよ、以上のことはわかりません…。
変更更新以外にも色々と
変更、更新の他は、再入国の許可、資格外活動許可。再入国の許可は在留カードがあればみなし再入国という制度があり簡素化されているようです。資格外活動許可も、書籍で取り上げたページ数が少ないので、手続としては複雑ではないのかなと。
あとは、読んでいてちょっとよくわからなかったのが就労資格証明書。書中には…
善意の雇用主が誤って就労活動ができない外国人を雇用することがないように~適法な就労可能な在留資格を取得していることを証明できるようにしたもの
とあります。
でも、在留カードは携帯義務がありますし、そこに「就労制限の有無」という欄があるので、これで証明可能では?と思ってしまいます。これについてはまた調べてみたいと思います。
法令集も読み込みます。
ここまでは、入管実務の流れについて、整理してみました。ですが、これら実務は入管法、施行令、施行規則、その他多くの関係法令を実務ベースにまとめたもの。
実務の流れももちろん重要なのですが、やはり一次情報である法令集に目を通すことも非常に大事なことです。入管手続の原理原則は、すべてここに書かれているのですから。
法令だけでなく、ガイドラインや許可不許可の事例集など、非常に有用な情報が入国管理局からも発信されています。これにしっかりと目を通すことが、許可率を上げていくことに繋がるものと考えます。
法令となるとボリュームも相当な分量になるので、一気に、とはいきません。ですが、少しずつ、着実に、読み込んでいきたいと思います。
サラリーマン行政書士としてできそうか?
さてここまで、テキストとした「第5版 よくわかる入管手続―基礎知識・申請実務と相談事例―」で学んだことを整理してきました。
ここで、私的に最も大事な論点です。「サラリーマン行政書士、兼業行政書士として行うことは可能なのか」、ということ。
私は、十分に可能であると思いました。入管へ出向くのは、書類の提出と受領の二回。不備があって再提出、追加があれば、その都度出向く必要もありますが、これは専業であっても同じこと。書類提出の前に、電話で必要書類をしっかりと詰めておき、申請者からもらった書類にも穴が開くほど目を通しておく。この部分を怠らないということも、専業も兼業も同じこと。であれば、この点は専業も兼業もイーブンだと言えますね。
会社の有休が20日あるとして、半日休暇を取っていけば年間40回、入管へ出向くことが可能です。一件の取次で二回出向く必要があるので、最大で20案件を受任することが可能になります。たぬきの皮算用ではありますが、複数受任して同時に持ち込めば、より多くの件数もこなせます。
ただ、入管が開いている平日に動く必要があるというのがネック。そしてもし書類の追加を、となったら、翌日もお休みをとって~というのはなかなか難しい。提出までにいかに書類の精度を上げられるか、というところが最重要ポイントになりそうです。
BtoBのお仕事であれば、お互いの合意の上、私の本業の終業後にクライアントへ書類を届けに伺うということも考えられます。ですが、対官公庁となると、曜日と時間は完全な制約条件となります。「行政」書士ですのでここは当たり前と言えば当たり前。副業・兼業である以上、また受任しようと考えている以上は、ここは自己責任でマネジメントしていくべきところですね。逆に言えば、ここのマネジメントさえできれば、というところでもあります。
さて、これからより詳細なところを詰めていって、受任に繋がるアクションを起こしていきたいと思います。