「ゲーム理論はアート」、経済学は芸術である。
本日紹介するのは、「ゲーム理論はアート」という経済学の本。
ゲーム理論をいかにして社会実装するか、という試みについて書かれています。
ゲーム理論はご存知の通り、経済学の一分野です。
それが、なぜアートなのか?気になるところです。
みなさん、アートというと何を思い浮かべるでしょうか。
まず最初に頭に浮かぶのは絵画でしょうか。
ピカソの「ゲルニカ」、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」、等々。
絵画以外にも、彫刻、オブジェ、音楽、色々なものがあります。
本書では、現代アートが、資本主義、全体主義や情報化社会といった社会的関係に強く触発されていると書いてあります。
そして、経済学、ゲーム理論は、様々な現代社会の問題解決につながるツールです。
このことから、ゲーム理論もアートも、社会的な関係と切っても切れない縁があり、両者に共通点を見出すことに繋がる、というわけです。
実際にゲーム理論が既に実社会の中で使われている例として、サッカーのPK戦の例が書かれています。
なんと、サッカーのPK戦と同じ理論が、テロ防止に役立っているというのです。
スポーツとテロ対策、まったく結び付かなさそうな両者ですが…。
こんなところでも、メタ思考、アナロジー思考が役に立ちます。
PK戦はサッカーという競技の一部ですが、これをメタ思考で、一つ上の次元から眺めてみます。
すると、このPK戦というゲームのシンプルな規則性が見えてきます。
キーパーが左に飛ぶなら、キッカーはその反対、右に蹴れば勝ち。
キーパーが右に飛ぶなら、キッカーは左に蹴れば勝ち。
このシンプルなルール、規則性を、テロリストと警備員という具体的な関係に当てはめます。
つまり、爆弾を設置するテロリスト(キッカー)と、それを防ぐ警備員(キーパー)の関係です。
書中もっと詳細に書かれていますが、このような具合に、ゲーム理論を用いて社会的関係にアプローチしていきます。
経済学というと、YだDだ、ρだなんだと、式もたくさん出てきていかにも難しいですが、本書には難しい公式やグラフは出てきません。
簡単な図がでてくるくらいで、数学アレルギーな方でも読みやすく書かれております。
聞きなれない用語は出てきますが、都度ぐぐれば対応できる程度のものだったりします。
非常にわかりやすく、ゲーム理論と社会のかかわりを学べます。
「学校で習うことは実社会では役に立たない。」
これは子供が勉強から逃げるための方便として使われる言葉ですね。
でも、実は世の中の仕組みは、学校、大学で習ったことがちりばめられているのです。
学校で習ったことが基礎になっている研究が、応用されて製品、サービスになっていたりもするのです。
こういったことがわかると、子供も勉強に対して動機付けをしてあげられるのかもしれませんね。
そのために、まずは大人が勉強は決して受験のためだけのツールではないということをしっかりと理解しなければなりません。
本書はその理解の助けになる一冊かなと思います。