『セルフ・ヘルプ』、自己啓発の名著『自助論』の完訳版。
久しぶりの自助論
書店の新刊コーナーで目に入ったとき、すぐに『自助論』だとわかりました。
本書のタイトルは『セルフ・ヘルプ 自主独立の精神』ですし、表紙にも裏表紙やオビにも、『自助論』とは書かれていません。
ですが、著者のサミュエル・スマイルズといえば『自助論』ですから、そこに『セルフ・ヘルプ』というタイトルがあれば、『自助論』に変換されるには十分です。
もちろん、『自助論』の原題は"Self-Help"ですので、本書タイトルの『セルフ・ヘルプ』のほうがそのまんま、正しいといえば正しいんですけどね。
初めて読んだ自己啓発本
なぜ瞬間的に『自助論』だと気付けたかというと、私が初めてよんだ自己啓発本が、竹内均先生が翻訳した『自助論』だったからです。
もしかするとそれ以前にもそういう類の本を読んだことがあったかもしれませんが、自己啓発を意識して読んだという意味においては、この本が初めてです。
また当時、読書量を増やしたいと思い速読の練習をしていました。
専門性も高くなく読みやすく、ひとつの話が2,3ページで終わる『自助論』は、練習題材として持ってこいでした。
速読が身についたかというと…、少しは早くなったとは思うのですが、それほど進歩は見られませんでしたね…。
偉人の成功談
初めて読んだ自己啓発本であり、速読の練習として何度もぺらぺらとめくっていた『自助論』。
これを読もうと思ったきっかけは、ビジネス雑誌の中のオススメ本コーナーで紹介されていたことだったと記憶しています。
紹介文としては、「世界の成功談を集めた一冊~」というようなものだったかと。
当時は安直に「手っ取り早さ」を求めて買ってしまったように思います。
成功ノウハウ本の「真面目版」くらいな感覚だったかもしれません…。
無論、読み始めてすぐに、そんな簡単なものではないと気付きましたが。
ただ、安易に手に取った『自助論』でしたが、結果的にはとても良いものを手に入れることができたなと思っています。
失敗から学ぶこともたくさんありますが、成功の場合は「受け入れる」だけ。
なにを受け入れるのかといえば、成功する人に共通する「正しさ」です。
真面目に愚直に時間をかけて、腐らずあきらめずまっすぐに一つのことに取り組む。
そういったシンプルな正しさを証明する人物とエピソードの集大成が『自助論』です。
時間をかけて、噛み締めるように読んでいくのがよいと思います。
やはり『自助論』
さて、自助論自助論と言っていますが、今読んでいるのは『セルフ・ヘルプ』です。
長らく『自助論』として読まれてきた本を、なぜ今になって『セルフ・ヘルプ』と言い直しているのか。
詳しくは本書冒頭に書かれていますが、要するに日本語の「自助論」という言葉では、自分の力に頼る、他人に依存しないといった捉え方をされてしまうため、Self-Helpに込められた「自助の精神は隣人も助ける」といった思いが伝わらないのではという配慮から『セルフ・ヘルプ』となっているようです。
ただ、日本では長らく『自助論』として愛されてきたタイトルですから、自分の頭の中にある言葉の意味の方をアップデートしたほうが良いと思いますね。
自助の精神こそすべての源泉
私は本当にこの「自助」という言葉が好きです。
本を開いて最初に目に入るのは、「天は自ら助くる者を助く」ということば。
これが自助の精神です。
他人や環境がどうあっても、自分だけは自分でどうにかなる存在。
当たり前ですが、それを忘れて他責にばかり走る人は意外と多いものです。
動いてくれない、批判的な他人のことをぐっとこらえて、自分が努力すればよいのです。
「天は~」とありますが、神様頼み、運頼みではありません。
やはり自助努力を怠らないから、周囲の人はチャンスを与えたがるし、逃さないということです。
常に怠っている人は、チャンスを貰えないし、いざというときにもチャンスをつかむだけの力もありません。
現実には、愚直なだけではうまくいきませんし、方向性を間違えた努力は無駄にしかなりません。
ですが、こうした自助の精神こそが成功に繋がるという多くの例示は、私たちを勇気づけてくれますよね。
これこそ自己啓発ということでしょう。
この本で何か具体的な知識やスキルを身に付けることはできませんが、知識やスキルを身に付けるために自助努力が必要だということは、一歩踏み出すためのきっかけになります。
まとめ的なもの
『セルフ・ヘルプ』は、小説でもないし、ノウハウ本でもありません。
たとえるなら名言集に近い本ですので、頭から読み始める必要もないし、つまみ食い式の読み方もありかなと思っています。
もちろん、582ページと分厚くはあるものの、平易で読みやすい本でもありますから、最初から最後まで通しで読んでみるのもいいでしょう。
色々な形の成功談があって、自らを奮い立たせる一話が必ずあるはずです。
そんなお気に入りの一話を探してみるのもまたよいかなと。
そう考えてみると、この『セルフ・ヘルプ』はいろんな楽しみ方ができる本ですね。
きっと長い人生の支えとなってくれる本ですので、手元に置いておくとよいでしょう。