『あなたの知らない脳』脳はあなたの意識から自立している。
脳のコントロールはno control!!
そんなおやじギャグから入る本エントリー。『あなたの知らない脳──意識は傍観者である』を読み終えました。
難しいけど興味深い分野、それは脳科学、心理学です。自分自身のことを深く知りたいと思うと、この二つの分野にたどり着く気がします。
『あなたの知らない脳』を知ったきっかけは、まず本書の著者であるデイヴィッド・イーグルマン(名前がめちゃくちゃカッコいい!)をTEDで見たことでした。
この動画は日本語字幕があるので、是非見ていただきたいです。動画では、「人の視覚は脳の中を流れる電気的信号でしかない」という主張の下、聴覚障碍者に対し音に反応し振動するチョッキを着てもらい、その振動パターンから言語を認識できるか、という実験の結果を報告しています。
脳は電気信号を言語に置き換える。
その結果は驚くべきもので、生まれつきの重度の聴覚障碍者が、たった5日後には背中で振動を感じ、単語に変換できるまでに至りました。イーグルマンは、このチョッキを3ヶ月も着用すれば、盲目の人が点字に指を滑らせた時のように、直接的に、瞬時に言葉理解できるようになると言います。
つまり、人間の脳というのは、電気信号を紐解いて意味を見出すという、とても複雑で高度なことを瞬時に成し遂げる能力を持っているのだと。数あるTED動画の中でも有数の、興味深いテーマ、研究、報告でした。
そして、これを見てしばらくしてから、何気なしに見ていたサイトの広告で、『あなたの知らない脳』がレコメンドされていました。こんなに簡単に広告がパーソナライズされるものかわかりませんが、お勧めされたのは事実。
そのイーグルマンの本だとすぐには気が付かなかったのですが、表紙が気に入って詳細を見ていった結果、あのTEDTalkの人だ!と、気付きました(笑)。
科学の研究成果は社会にどう活かされるか
インターネットやAIといったテクノロジーは、研究結果が社会に活かされるイメージがしやすいですよね。私たちが毎日触れているパソコンやスマホに直結します。仕事でもプライベートでも、インターネットのない生活など考えられません。
ですが、脳科学というと、どのように社会実装されたり、どのように役に立つのか、あまり創造が付きません。
そうなると、本で読んだ知識も、「面白かったね」で終わってしまいます。それではとてももったいないし、しばらくすれば忘れてしまいますよね。
そういう意味でも、本書は研究結果を踏まえた社会的な問題提起がなされているので、有意義ですし、机の上でのお話ではないなと感じます。本書では、2/3を研究結果の報告に割き、残りの1/3は研究結果を踏まえて、行動が非難に値するかどうか問うことは的外れだ、という主張を展開します。
本書の研究結果では、人間は自分の意思で行動しているようで、実は意識が介在する前に脳が全て処理してしまっている、つまり人間は自分の行動をコントロールできていないと言っています。
人間には科学的にも自由意志と言えるようなものはなく、それであれば人間の行動の責任はどこにあるとするのか。行動を非難に値するかどうかを問うことは意味がないのではないか、と。
そう考えると、世の中がまた違って見えてきます。昔から知っている言葉の意味も、深みを持ったり、少し捉え方が変わってきたりしますよね。「罪を憎んで人を憎まず」、「魔が差した」、これらの言葉にも、なにか科学的根拠が与えられたような思いがします。
寛容な社会、というものを提唱しているわけでもないかもしれません。でも、罪を犯すということ自体がその人の本性ではないし、その人自身を非難の対象にするべきではないというのは、少し心が軽くなりますね。
まとめ的なもの
科学というと、やや冷たいものをイメージします。人類の歴史の中では、今でこそ利便性向上のために使われている技術も、軍事から転用されたものも多くあります。このインターネットだって軍事からの転用です。
SF小説では「行き過ぎた科学」というテーマのものが多くあります。AIが仕事を奪うならまだしも、ターミネーターのような世界になったら…。その根底には、科学を用いて持つべきでない力を身に付けようとしている人類への危惧があります。
そのような側面を持つ科学にあって、本書が提示する研究結果は、人間により人間らしくあるようにと問いかけているように思いました。
あなたの知らない脳──意識は傍観者である (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: デイヴィッド・イーグルマン,大田直子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/09/08
- メディア: 文庫
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『世界を変えるSTEAM人材』STEAM教育によるイノベーティブ人材の育成。
AIをねじふせるスーパー人材を育てる
STEAM教育、STEAM人材、最近よく聞きませんか?落合陽一先生の『ゼロヒャク教科書』でもその必要性が書かれていて、レビューエントリーでもちらっと紹介しました。
STEAM教育とは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、アート(Arts)、数学(Mathematics)の頭文字をとったもので、スチームと読みます。
Steamは蒸気を意味する英単語でもあります。このSTEAM教育を受けたSTEAM人材が新たな時代を創り出していくと考えると、第一次産業革命をけん引した蒸気と同じつづりというのは、何か運命めいたものを感じますね。もちろん、こういったことを意図して頭文字を並べたのだと思いますが。
さて今回は、そんな話題のSTEAM人材を取り上げた新書、『世界を変えるSTEAM人材 シリコンバレー「デザイン思考」の核心』を読みました。
また、NewsPicksの特集の中でも、本書が紹介されていましたのでリンクを貼っておきます。
上の記事はNewsPicks有料会員限定、下の記事は誰でも読める記事です。
理数系のSTEMにアートを加えたSTEAM教育
STEAM教育は、元々はSTEM教育というものがベースとしてあり、これにArtを加えたものです。STEMがなんの頭文字かは上記の通り。STEMは日本でいうところの理系分野に重きを置いた教育ということになります。新しいテクノロジーに対応する人材を育てるためのカリキュラムと言っていいでしょう。
ただ、これにいち早く取り組んでいたアメリカでは、どういうわけかSTEM領域の学力を図ることのできるPISAという学力テストで、思わしくない結果が続いたそうです。
シリコンバレーにおける将来のイノベーティブ人材を育てようとして始まったはずなのに、そのようなスーパー人材がなかなか育たないどころか学力低下を招いているというのはどういうことなのか。この原因について様々な討論された結果、従来のSTEMにArtを加えたSTEAM教育が生まれたそうです。
イノベーターのマインドセットの定義
それでは、アメリカが、世界がSTEAM教育で育てようとしたイノベーティブ人材、イノベーターとはどのようなものなのでしょう。
本書ではイノベーターのマインドセットとして下記のように定義しています。
- 型にはまらない think out of the box
- ひとまずやってみる give it a try
- 失敗して、前進する fail forward
これを見ると、イノベーターと言われる人の傾向が見えてきますよね。良い意味で常識はずれで、考えるより(考えながら)まず行動、現時点での失敗は将来の成功の糧。
やはりまず、エジソンが思い浮かびます。エジソンはインタビューアーに成功までに多くの失敗をしてきたことを指摘された時、こう答えています。
失敗ではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ。
いや、失敗は失敗でしょ!と思うかもしれませんが、この感覚の違いがイノベーターにとって大切なことなのでしょう。自分の才能に蓋をせず、とにかく何度でもチャレンジしてみる。このマインドセットこそがイノベーターの条件。
そしてこのイノベーターのマインドセットを鍛えるのが、STEAM教育なのです。
イノベーターはデザイン思考を用いる
また、STEAM人材の目的、マインドセットは、デザイン思考とも深く繋がっていると言います。
デザイン思考とは、デザイナーがデザインを行ううえで用いる思考法のこと。最近ではビジネスの場でもこのデザイン思考のエッセンスが取り入れられてきていますね。
デザインとアートは似ているようで異なるものです。デザインもアートも美観に訴えるものですが、問題解決をもたらすものがデザイン、といったところでしょうか。問題解決に繋がるからこそ、ビジネスの場でも人気なのですね。
また、この直感というのは、山口周さんが『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』で指摘している美意識とも繋がるものではないでしょうか。本のオビにも「直感」と「感性」の時代、というフレーズがあります。
同書の中で山口さんは、論理力(サイエンス)だけではこれからの時代は勝ち抜けず、直感こそが大事になってくると指摘しています。そしてその直感を育てるのがアートなのだと。
こう考えると、キーワードこそ違えど、本書でいうところのSTEAM人材がいかに世界で活躍しているか、活躍を期待されているかがわかりますね。
そしてその根底にデザインやアートに根ざしたデザイン思考や美意識があるのだというこも。
まとめ的なもの
本書ではSTEAM人材を紹介したのちに、STEAM教育とは、デザイン思考とは、という流れになっています。本エントリーではざっくりと、STEAM教育とSTEAM人材の概要をまとめてみました。
こうして見えてきたSTEAM人材の定義、当てはまる人を思い浮かべると、恐らく多くの人があの人を思い浮かべるでしょうね。ありきたりですが、スティーブ・ジョブズです。イノベーターの定義そのものですし、iPhoneが生み出されたのも、まさにその直感力によるところ。
今でこそそういうニーズがあったから、などと言えるのでしょうが、当時からしたらまったく想像もできませんでした。私はiPhone3GSからずっとiPhoneユーザーですが、3GSを購入するほんの少し前まで、あんな大きな板を耳に当てるなんてダサいと思ってました(笑)。
それが今では3GSの1.5倍はあろうかというⅩSを使っていますし、ⅩS MAXユーザーはもうひと回り大きい。Androidユーザーであればさらに大きなスマホを耳にあてています。もちろん、ダサいなんて思うこともなくなりました。
こう考えると、いつの時代もデザイン思考のイノベーターが我々の常識を打ち壊してくれて、そのおかげで思いもよらない便利な道具に浴することができる。イノベーター様様です。
そして、そんなイノベーターを意図的に育てていこうというSTEAM教育。日本も世界のSTEAM教育、STEAM人材に遅れを取らないよう、教育をアップデートしていかなければいけませんね。
また、すでに社会にでている大人達がイノベーター、STEAM人材になるための学びというものがあるのか、どのようにしたらそのようになれるのかも、考えていかなければなりませんね。
世界を変えるSTEAM人材 シリコンバレー「デザイン思考」の核心 (朝日新書)
- 作者: ヤング吉原麻里子,木島里江
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2019/01/11
- メディア: 新書
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古物営業法改正で古物商が注意すべきポイント。
古物営業法改正の研修会に参加しました
先日、古物営業法改正についての研修会に参加してきましたので、今日は情報共有と注意喚起をしたいと思います。
まず、今回の古物営業法の改正法は平成30年4月25日に公布され、同年10月24日、改正法の一部が施行されております。また、施行は二段階で施行され、全面改正については「改正法の交付から2年を超えない範囲内において政令で定める日」ということです。
この「政令で定める日」がまだ定まっていないのですが、遅くとも平成32年(西暦2020年)4月24日までには全面施行されますよ、ということになります。
古物営業法、改正内容を整理します
ここで一旦、古物営業法改正の10月24日施行と全面施行について、変わった点をまとめてみます。
10月24日施行分概要
10月24日施行では、以下の3点が変わりました。
- 営業制限の見直し
これまでは以下の制限がありました。
古物商は、営業所又は相手方の住所以外の場所で、買取り等のために古物商以外の者から古物を受け取ることはできない。
これが、以下のように変わりました。
古物商は、仮設店舗を設けようとする場所を管轄する警察署へ事前(3日前まで)に「仮設店舗営業届出書」の届出をすれば、仮設店舗においても古物を受け取ることができる。
これまでは古物を受け取ってよいのが古物商の営業所と相手方の住所等に限られていたところ、仮設店舗でもそれが可能になります。研修の説明では、イベント会場や、百貨店などのスペースを借りて行うことができるようになったとのこと。期間も一定期間の指定が可能で、半年程度であれば、既に届出・承認の事例があるとのことです。
- 欠格事項の追加
禁固以上の刑や一部の財産犯の罰金等に係る善かを有することなどを欠格事由として規定し、該当する者は許可を取得できない。
改正後は以下の者が追加されます。
従来の欠格事由に加えて、暴力団員やその関係者、窃盗罪で罰金刑を受けた者
一応厳しくなったということですが、反社会勢力に対してのことなので、一般の古物商事業者にはあまり関係のないことですね。
- 簡易取消しの新設
許可を取り消すためには、古物商等が3ヶ月以上所在不明であること等を公安委員会が立証し、聴聞(所在不明なら公示)を実施する必要があった。
改正後は…
古物商などの所在を確知できないなどの場合に、公安委員会が公告を行い、30日を経過しても申出がない場合には、取消しの対象となる。
こちらも、実態のない古物商に対する許可の取り消しをスムーズに行うというものですので、ちゃんと古物営業を行っている事業者にはあまり関係なさそうです。
10月24日施行分では、「営業制限の見直し」により古物商許可の利便性があがったということだけおさえておけばよいでしょう。
全面施行分概要
次に全面施行分について。
- 許可単位の見直し
改正前、つまり現行(○○年○月○日時点)法はこうなっています。
営業所等(古物営業所及び古物市場)が所在する都道府県ごとに古物商等(古物商及び古物市場主)の許可を受けることが必要
これが、改正後はこうなります。
主たる営業所等の所在地を管轄する公安委員会の許可を受ければ、その他の都道府県に営業所等を設ける場合には届出で足りる。
これはとても便利ですね。東海三県で許可を取得する場合、愛知、岐阜、三重それぞれの経由警察署へ行かなければならなかったところが、主たる営業所等が愛知県であれば、愛知県の経由警察署だけで手続きが済むということになります。
とても便利になるんですけど、こんなこと、以前からできなかったのだろうか・・・と思ってしまうのは一般企業の感覚ですかね。
古物営業法、全面施行に先立ち、要注意!!
さてこの法改正、全面施行までにしなければならないことがあります。これをせずにいると、古物商許可が失効し、改正後に改めて許可を申請・取得することとなりますので注意が必要です。
このしなければならないことというのが、「主たる営業所等の届出」です。「等」とあるのは、営業所の他に古物市場も対象だからです。「主たる営業所等の届出」は簡単な書類ですので、早いうちに経由警察署へ提出することをお勧めします。
届出書類は以下の二種類です。
- 主たる営業所等届出書
- その他の営業所又は古物市場
1.はどの古物商、古物市場主も提出しなければなりませんが、2.は複数営業所で古物商許可を得ている事業者のみのものです。
さてこの「主たる営業所等の届出」、実は届出をすること自体にも、注意が必要になります。どういうことなのか、説明しますね。
主たる営業所等の届出のタイミング
「主たる営業所等の届出」は古物営業法改正の全面施行前に行わなければならないというのは上記の通り。ただ、この届出をした後、改正法の施行前に届出内容に変更があった場合には、なんと、再度「主たる営業所等の届出を行う必要があります。
この再度の届出をしなかった場合、最初から届出を行わなかったのと同じく、改正法全面施行とともに古物商許可は失効、改めて申請・取得をしなければならなくなります。
すごくややこしいというか、正直なところ「ちゃんと届出してるんだから、そんなものは警察で把握しておいてくれよ!」と思います。警察もお役所仕事だなぁと思いますが、それをやらなければ古物商許可が失効してしまうので、やるしかない、といったところですね。
このややこしい書類提出の流れを、わかりやすく例示してみたいと思います。
主たる営業所等の届出というものをしてみんとてするなり
さて私の会社では、本社から離れた営業所で古物商許可を取得しておりますが、今回の古物営業法改正により「主たる営業所等の届出」を提出しなければなりません。そこへ、丁度よいタイミングで複数の営業所で古物商を行いたいという営業所追加事案が発生し、そのうちの一つが本社にある営業本部だった、ということで話を進めていきたいと思います。
この場合何をする必要があるのか、流れを見ていきましょう。
ちなみに、前提条件としてすべての営業所が愛知県内にあるということで話を進めていきます。
いつ「主たる営業所等の届出」をするか?
改正法全面施行の前に「主たる営業所等の届出」をしなければ、古物商の許可が失効してしまいます。ですから、何はともあれこの届出をしたいところ。
ただ、ちょっと待ってください。先にも書きましたが、
「主たる営業所等の届出」後、改正法の施行前に届出内容に変更があった場合には、再度「主たる営業所等の届出を行う必要があります。
という面倒なルールがあります。ですから、この届出をするのは一番最後でなければなりません。こんなこと、BtoBではまず考えられないし、思いやりのかけらも感じないルールだなと思いますが、ルールはルールなのでやらざるを得ませんね。
経由警察署の変更は行えるのか
経由警察署の変更について、これは愛知県が特殊なのかもしれませんが、簡単に変更できてしまうようです。
ネットで「古物商 経由警察署の変更」と検索すると、最初に古物商許可を申請した窓口が経由警察署となり、変えるには経由警察署の管轄区域内に営業所を有しないこととなった場合のみ変更できる、ということが書かれたサイトが多く出てきます。このことは古物営業法施行令9条に明記されていますね。逆に、こうすると変更できます、ということを書いたサイトは見当たりません。
つまり今回のように、最初に許可を得た営業所を廃止するでもなく、新たに営業所を追加しつつ、本社管轄の警察署を経由警察署に変更すること、というのは原則できないことになるはずです。
ただ、そんな不便なことってある?というのが世間一般の感覚ですよね。私も何か方法があればと、確認のため警察に問い合わせたところ、「変更の書類出してください」の一言で終わりました。簡単にできるようです。一体何なんでしょうね。
そんなわけで、「愛知県では」経由警察署の変更は特段縛りなく行えるということがわかりました。
経由警察署の変更と営業所の追加はどっちが先?
「主たる営業所等の届出」は先に出しては再度届出が必要になるので面倒だということでしたが、経由警察署の変更と営業所の追加は、同時に書類を提出してくれて構わないとのこと。
経由警察署の変更は現在の経由警察署へと届出るものなので、一旦は遠方であっても、現在の経由警察署へと書類を提出しに行かなければなりません。
でも、この書類を提出してしまえば、次からは市内の警察署を経由警察署とし、各種届出をすることができてしまうので、とても楽になりますね。
最後に「主たる営業所の届出」をして完了
今回は経由警察署の変更と営業所の追加の二点が、届出内容の変更に該当するものでした。もしまだ、役員が変更になるだとか、本社所在地が変わるだとか、何らかの変更があるのであれば先に済ませてしまいたいところ。
ただ、まだ検討中でいつになるのかわからないだとか、決定はしているけど1年先だというのであれば、先に「主たる営業所の届出」をしてしまいましょう。
これを出していないと許可は失効してしまうので。再度届出するのも面倒ですが、だからと言って失効のリスクに甘んじるわけにはいきませんからね。
さて、この「主たる営業所の届出」というものですが、古物を取り扱う営業所が一つしかない場合は「その1」のみ。複数営業所がある場合は、「その2」の「その他の営業所又は古物市場」も提出する必要があります。
また、他県にも営業所等がある場合は、その県の分も作成する必要があります。要するに、古物商の許可を受けて届出ているすべての営業所を記載して届出る必要があるということ。
今回の例では、全て愛知県内なので、「その1」に「主たる~」を、「その2」に「その他の~」の二営業所をまとめて書いて提出することになります。
以上が今回の古物営業法改正に伴って行わなければならない届出です。
まとめ的なもの
最近は直接業務にはかかわらないような研修が続いたため、久々に実務に直結する研修でした。ただ、研修に参加するだけでは知識も身につきませんし、サラリーマン行政書士でばりばり行政書士業をできないのならなおのこと。
その点今回は、会社でも古物商ニーズがあったために参加した研修ですので、そのまま知識を実務に活かすことができます。サラリーマンとしてはそうなのですが、これを個人事業主である行政書士としてもしっかり活かし、サラリーマン、行政書士の双方両方を業として行いたいというのが本当のところ。
今年の課題の一つは行政書士としてのマネタイズです。収入のバランスはサラリーマンが主だとしても、副業ではなく複業、パラレルキャリアだと言えるように精進してまいります。
『アンガーマネジメント入門』怒りの感情に振り回されないために。
怒りっぽいと損をする
『アンガーマネジメント入門』、読みました。アンガーマネジメントには以前から興味もありました。本書の著書である安藤俊介さんは、日本のアンガーマネジメントの第一人者ですね。NewsPicksのプロピッカーでもあるので、お名前、コメントはよく拝見しております。
さてこのアンガーマネジメントとは何かということですが、書いて字のごとしです。アンガー=怒り、マネジメント=管理、ということで、怒りをどのように管理、コントロールしていくかというスキル、ノウハウになります。
こんなことは言うまでもなく誰でもわかっていることですが、怒りっぽいと損をしますね。短気は損気というやつです。自分が短気なのか、職場の先輩上司が短気なのか、いろいろあると思いますが、怒りっぽいと場を凍り付かせます。
これをコントロールできるようになれば、職場でのコミュニケーションも加速しますし、自分もストレスから解放されて、一石二鳥。これは身につけておくべきスキルなのではと思ったのが、興味を持ったきっかけです。
怒って得たものって、ありますか?
まず、怒ったときのことを思い出してみてください。怒った原因ははっきりしていますか?本当に怒るほどのことでしたか?怒ったことで何か得るものがありましたか?
はい、おそらく三つとも明確に答えられた方は少ないのではないでしょうか。 特に三つ目、怒って得られたことなんて、きっと何もないですよね。得られると期待したことならあるかもしれません。「ちゃんとやれ!」と怒ったなら、相手がこれからちゃんとやってくれることを期待したわけですから。
でも、その後表面上はちゃんとやっているように振る舞うかもしれませんが、根本的な理解をしてくれたかは怪しいですし、怒声をあげたあなたに対しては、もはや信頼を失ってしまったでしょう。これはプラスマイナスで言えば、マイナスです。やはり短気は損気、アンガーマネジメントを身に付けて、怒りをコントロールしていく必要がありますね。
また、怒って得るものがないのなら、怒るほどのことでもなかった、怒る必要はなかったということ。ではなぜ怒ってしまうのでしょう。
怒るときって、反射的にカッとなってしまうものだと思います、よね?
怒るというのは自分で決めたこと
以前読んだアドラー心理学の『嫌われる勇気』にも、哲学者と青年の間でこんなやりとりがありました。
哲学者「あなたは感情に支配されているの?」
青年「そんなことはない!」
哲学者「では、怒ることを抑えることはできますね?」
『嫌われる勇気』はアドラー心理学について書かれた本ですが、この考え方はアンガーマネジメントにも通じるものですね。我々は決して、感情に支配されてはいない。だから、怒る人は、何か起きたその瞬間に、怒るということを自分で決めて怒っているのです。カッとなって、反射的に怒っているようで、実は怒りというのは自分で選択しているものなのです。先天的なもの、変えられない性格といった類のものではありません。
これを理解したうえで、本書はスキルとして、怒りをコントロールする方法を教えてくれます。
スキルとしてのアンガーマネジメント
アンガーマネジメントには「行動の修正」と「認識の修正」があるそうですが、まず根底に、「なりたい自分」がなければなりません。アンガーマネジメントは怒りをコントロールするスキルですので、当然「怒りっぽいところを直したい」「穏やかに生きたい」といったところでしょうか。
このイメージをしっかりと持つために、アクトカームというものを行います。これは、穏やかな自分を演じるというものです。心の中ではイラっとしたりしても、絶対に表面に出さないこと。これを行なっていくうちに、周囲との関係も変わってきて、「怒らないっていいな」と思うようになる。ただ、これが簡単にできるのなら、苦労しないのですが…。
いずれにせよ、このアクトカームで、これからも怒らない生き方をしていきたい!とイメージした上で、行動の修正、認識の修正を行っていきます。 二つ挙げていますが、実はそれぞれとても沢山のスキルがあるのです。
まず行動の修正としては…
- ストップシンキング
- ディレイテクニック
- コーピングマントラ
- グラウンディング
主なものでこれだけあります。行動は認識と違って、やればよいだけのことなので、比較的取り組みやすいものなのだとか。確かに、やると決めたらやりますもんね。
それから認識の修正。
- スケールテクニック
- アンガーログ
- ストレスログ
- 3コラムテクニック
認識の修正はこんなところ。中には心のありようを書き出すなど、行動的なものもありますが、書き出したうえで、その心のありようと向き合うのが認識の修正です。
まとめ的なもの
一通り読んだら、実践あるのみなのがアンガーマネジメントです。読んだっきりでは忘れていってしまいますし、何も変わりませんね。アンガーマネジメントは知識ではなく、普段の行動によって身についていくもの。習慣、ルーティンです。
逆に言えば、私やみなさんが普段怒りっぽいとしたら、それもまた悪い習慣の中で身についてしまったもの。この悪い習慣を行動面、認識面で修正し、心豊かに怒りと向き合って行くのがアンガーマネジメントです。あくまで向き合い方、付き合い方のマネジメントであって、怒りそのものをなくしてしまうというものではありません。
これがまたアンガーマネジメントの面白いところかもしれませんね。怒りといえど、人間の一つの感情です。これをなくしてしまうこともまた人間の心、感情の豊かさに反するもの、ということでしょうか。
組織、コミュニティと同じで、悪いものは追い出す、という単純な発想ではなく、理解して受け入れてあげる寛容さこそが、アンガーマネジメントの本質なのかもしれません。
今月の読書、まとめ的なもの。~2019年1月~
2019年1月の読書、まとめ的なもの。
身になった本難しかった本、色々とありますが、一ヶ月分をヒトコメで振り返ります。
- 吉田松陰(童門冬二)
- 劣化するオッサン社会の処方箋
- 家康、江戸を建てる
- 人生を動かす賢者の名言
- ゼロヒャク教科書
- 世界のエリートはなぜ「美意識を」鍛えるのか?
- サピエンス全史(上下)
- 世界一ゆるい聖書入門
- 日本進化論
- 日経大予測2019 これからの日本の論点
- 世界を変えるSTEAM人材
- アンガーマネジメント入門
- あなたの知らない脳
- 1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365
- サブスクリプション
- その他
- まとめ的なもの
吉田松陰(童門冬二)
2019年一発目はこれ、小説吉田松陰。吉田松陰を書いた小説は沢山ありますが、童門冬二さんも書いています。
野山獄の場面がとても長いのですが、この時期があっての松下村塾。人物描写も人間味あふれ、魅力的に描かれています。小説ですが、ドキュメンタリー的で、途中に何度も吉田松陰の人物像を理解するための考察が入ります。
その純粋さゆえに、最後は過激な道、破滅的な道を自ら歩んでしまいますが、その後の日本に与えた影響は計り知れませんね。
劣化するオッサン社会の処方箋
NewsPicksの特集とタイアップした新書。かなりセンセーショナルなタイトルですが、良薬口に苦しということで、自らを振り返りながら読みました。
こういう人会社にいるよね!とうなずきながらも、自分もそういう振舞いをしてしまうことってあるんじゃないか?と、ぎくりぎくりと思いながら読みました。
まだまだオッサンという年齢ではないですが、中身がオッサンにならないために何ができるのか、本書はとても参考になります。
劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか (光文社新書)
- 作者: 山口周
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2018/09/13
- メディア: 新書
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家康、江戸を建てる
正月三が日にテレビでも放映されましたね。私は録画に失敗したために見ることができませんでしたが…。
小説タイトルを見ると家康が主役のように思えますが、読んでみると、ほとんど家康は出てきません。主役は現場リーダーでしょうか。江戸という都市は、世界的に見ても人口、インフラ、教育等、多くの面で抜きんでていました。その世界的な都市の基礎が、どのようにして作り上げられたのか。現場視点で描かれています。サラリーマンとしては共感する場面の多い小説です。
人生を動かす賢者の名言
名言は大好きです。偉大なことを成し遂げた人の言葉には重みがあります。その人の価値観、美意識、マインドセット、そういったものが見えてきて、短い言葉の中に、人生の教訓が詰まっています。
あらゆる分野の方の言葉が集められているので、あなたの尊敬している人の言葉も見つかるかもしれません。私が好きなのはイチローの言葉、「 小さいことを重ねることが、とんでもないところに行くただ一つの道だ」です。
ゼロヒャク教科書
略しましたが、正式には『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書』、通称ゼロヒャク教科書です。
こんなに長いタイトルの本は初めてですし、せっかくなのでエントリータイトルには本書タイトルを略さずに入れてみました。
100才まで~というのは『LIFE SHIFT』の人生100年時代を意識してのものですね。一生涯学び続け、楽しんで働けるようになりたいものです。
リカレント教育というと、古くなった知識スキルをインストールしなおす、つまり一時的なものと捉えがちです。私はそうは思わず、せっかくリカレント教育で学びなおす機会を得たのなら、そのまま継続して一生涯学び続ける習慣を付けられたら良いなと思います。
もちろん、学校のお勉強ではないので、自分で必要と思うこと、楽しめることを学んでいけばいいのです。
0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書
- 作者: 落合陽一
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2018/11/29
- メディア: Kindle版
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世界のエリートはなぜ「美意識を」鍛えるのか?
美意識、言い換えると価値観、判断基準、マインドセット、コンパス。ですが、本書であえて「美意識」といっているのは、まさにアートを学べということなんですね。
サイエンスという技術を適切に使いこなすには、ロジカルシンキングもよいけれど、アートな感覚、直観力も大事。
特にVUCAと言われる複雑怪奇なご時世では、論理力よりも鍛えられた直観力、美意識による意思決定こそが、勝ち抜いていくための武器になるんですね。
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)
- 作者: 山口周
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2017/07/19
- メディア: 新書
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サピエンス全史(上下)
長いこと読みたいとの思いを温めてきましたが、高まる期待にしっかりと答えてくれる本でした。
人類の文明の構造とは、「虚構」。この二文字が上下巻通して重要なテーマです。宗教、社会、貨幣、経済、多くの虚構を気付き上げることで繁栄した人類。
種の繁栄という意味で言えば大勝利ですが、それにより個々の人類は幸福を得たのか。歴史の事象の積み重ねだけでなく、より深い部分へアプローチし、読者に考える機会を与えてくれます。
世界一ゆるい聖書入門
Twitterで人気の上馬キリスト教会の信者が書く、世界一ゆるい入門書。
この本ではキリスト教のことをちゃんとは理解できません。これは書中でもことわりが入っています。ちゃんとわかりたかったら、ちゃんとした入門書を読んでね、と。
旧約聖書、新約聖書の登場人物たちを面白おかしく紹介し、キリスト教入門に興味を持つ、というところまで持っていけたなら、本書は十分役目を果たしたと言えるでしょう。
面白い本でしたが、ゆるすぎ!!
日本進化論
今年もハイペースで著書を出していくのでしょうか。新年一発目は総論的なもの。昨年も『日本再興戦略』がそのような感じでしたが、年初はこういうものが良いですね。各論深掘りの前に目次的に並べてみたい。
ポリテック、政治にもテクノロジーを。先日衆議院で、タブレットに表示した原稿を読もうとしたところ「前例がない」と拒否されたというニュースがありました。そのような思考停止した方が政治家をやっているようでは、日本は失われた40年、50年もあり得ます。新しいものを受け入れられない政治家は全く必要ありませんね。
政治家も政策も、アップデートを。
日経大予測2019 これからの日本の論点
金融、経済、政治、国際、そんな堅苦しい論点で、2019年を大予測します。それぞれの論点をそれぞれの専門家が執筆されているので、とても詳しく、そしてわかりやすく書かれています。
似たようなものは朝日や文芸春秋でも出ていますが、どれでもよいので一冊読んでおくと、この一年の日本の論点が、文脈として見えてくると思います。
世界を変えるSTEAM人材
最近何かと話題のSTEAM教育、その教育を受けて育った人材がSTEAM人材。既に多くのSTEAM人材がシリコンバレーでは活躍しています。
この教育の大きな特徴としては、サイエンス科目の中に人文系のアートが入っていること。サイエンスを使いこなすためにアートを身に付ける。
これは先に紹介した山口周さんの『世界のエリートはなぜ「美意識を」鍛えるのか?』にも共通するものですね。
色々な本で、記事で、アートの教養を身に付けることが推奨されています。アート自体は楽しめるもののはずなので、流行りに乗っかってみるのも悪くないですね。
世界を変えるSTEAM人材 シリコンバレー「デザイン思考」の核心 (朝日新書)
- 作者: ヤング吉原麻里子,木島里江
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2019/01/11
- メディア: 新書
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アンガーマネジメント入門
回転スピードの速い現代という世の中、多くの人がストレスを抱えてイライラしています。時には怒りを爆発させてしまい、その後自己嫌悪に…。
アンガーマネジメントはそんな現代人には必須の自己管理ツールなのかもしれません。怒りっぽい人は是非一度読んで、怒りをコントロールし、怒りとうまく付き合う術を学んでみてはいかがでしょうか。
怒りは負の感情ですが、捨て去ることはできません。無理に押さえつけるんじゃなくて、コントロールして付き合っていくことが大事ですね。
あなたの知らない脳
人は思っているほど意識的に生きられていない。というか、意識はほとんど行動に反映されていない。そんな驚くべき事実が書かれています。
人類は多くのことを発見してきましたし、それを組み合わせて、つい一世紀前には思いもつかなかったような高度なテクノロジーを創り出してきました。そんな人類でも、脳のことはまだまだ知られていません。しかも、脳をこんなにも意識的に使えていないとは…。
そして話は脳の科学の話から、哲学、社会学へと広がります。単に専門外の読者を脳科学へいざなうだけでなく、社会問題の定期にまで至るところが本書の面白いところ。
あなたの知らない脳──意識は傍観者である (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: デイヴィッド・イーグルマン,大田直子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/09/08
- メディア: 文庫
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1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365
長かった…365日かけては読みませんでしたが、長かった…。ついに読了です。
なかなかつらい旅ではありましたが、概ね楽しんで読むことができました。自分の好奇心の向く先が見えてきましたし、苦手な分野、知らないこと、いろいろと見えてきて、よいきっかけになりました。
日本でもロングセラーになっているようですが、価格も高くないですし、一冊身近に置いておくとよいと思います。
www.co-idealblog.com
- 作者: デイヴィッド・S・キダー,ノア・D・オッペンハイム,小林朋則
- 出版社/メーカー: 文響社
- 発売日: 2018/04/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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サブスクリプション
現代版定額課金。従来の定額課金はただの固定料金前払い。現代の定額課金はサブスクリプションが持つ機能のうちの一つ。しかもまったくメインではない。
インターネット、クラウド技術により、ビジネスモデルを創り変えるほどのインパクトを持つマーケティング概念に進化しました。
しかもIT業界だけでなく、あらゆる業界でこの概念を取り込んだビジネスモデルが生まれています。本書第一部では、多くの業界でサブスクリプションを導入した成果が紹介されています。
あなたの会社でも、サブスク化できるものがあるんじゃないでしょうか。一度考えてみると面白いかもしれません。本書第二部では、会社でサブスクリプションを導入する際の手順、オペレーションについて書かれており、きっとその助けになると思います。
サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル
- 作者: ティエン・ツォ,ゲイブ・ワイザート,桑野順一郎,御立英史
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2018/10/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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その他
その他、以下の本を含めて22冊読みました。
まとめ的なもの
もう少し読めた気がしますが、年始はなかなか仕事も忙しく、思いのほか時間が取れませんでした。それでも22冊を読むことができました。20冊を超えていれば十分ですね。
そろそろ『利己的な遺伝子』にチャレンジしようと思いつつ、あの厚さはなかなか…。何よりも、あの厚さは鞄に入れて持ち運ぶのがつらいんですよね。
少し溜まりつつある実務系の本もこなしていきたいですが、『サピエンス全史』の続きの『ホモ・デウス』も気になっております。
さて2月は何を読んでいきましょうか。楽しい悩みです。
『サブスクリプション』で顧客志向のビジネスモデルを実現する。
『サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル』、読了しました。
ビジネスモデル、マーケティングのトレンドとなっているキーワードは沢山ありますが、その中でも「サブスクリプション」はかなり気になっていました。今回そのキーワードズバリそのものがタイトルになったのが本書。
サブスクリプションという概念や社会への実装状況等、本書ではとても分かりやすく説明してくれています。
サブスク化する世界
サブスクリプションモデルは、ビジネス的にも、個人的にも、最近とても気になっているテーマです。ビジネスでも個人でも、この形態のサービスを一つは利用していると思います。
会社では、サービス名はあえて伏せますが、ワークフローシステム、勤怠システム、経理システム、Officeオフィスアプリをサブスクリプション形態で契約、利用しています。
個人で言えばAmazonの電子書籍サービスのKindle Unlimited、音楽配信サービスのAmazon Music、ニュースアプリのNewsPicks、マイクロソフトのOffice365などをサブスクリプション形態で利用しています。
Office、音楽、書籍、アプリ、ゲーム、クラウドストレージ、この辺りがサブスクリプションで提供されているサービスで、すぐに思い付くところでしょうか。ですが、今では飲食店でも見かけますし、トヨタもそのようなサービスを始めるようです。最後にニュース記事のリンクを貼っておきましたが、家具業界でもサブスク化が進んでいます。
このサブスクリプションという契約形態も、つい数年前まではあまり聞かなかったもの。似たようなものとしては新聞の定期購読がありましたね。でも、サブスクリプションと新聞の定期購読には大きな違いがあります。そのあたりも本書を読むと理解できます。
サブスクリプションといえば『サブスクリプション・マーケティング――モノが売れない時代の顧客との関わり方』の方が以前から出版されております。私も先月読みましたが、個人的には今回読んだ本の方がしっくりときましたね。どちらもサブタイトルに「顧客」が入っていて、顧客中心のマーケティングメソッドだということがわかりますね。
NewsPicksで本書の著者の記事がピックされていましたので掲載します。
さて、本書について、第Ⅰ部では、サブスクリプションがビジネスモデルを変えている現状を、いくつかの業界について紹介しています。第Ⅱ部では、サブスクリプションを自社に適用する手順、オペレーションについて説明しています。
このエントリーでは、第Ⅰ部で書かれていることについて触れていきます。さぁ、サブスク化する世界を見ていきましょう。
サブスクリプションモデルとは何か
まずサブスクリプションとは、ざっくりと、誰にでもわかるように一言でいうならば、定額課金制です。イメージしやすい例は、新聞や雑誌の定期購読をイメージしていただければと思います。ですが上記の通り、より本質的に見ると、これまでの定額課金と現代のサブスクリプションは大きく異なる点があります。
本書のオビを見ると、こう書いてあります。
サブスクリプションは単なる課金形態の変更ではなくビジネスモデルの変革である
サブスクリプションという概念の、支払いの部分が定額課金制というだけで、定額課金制とサブスクリプションがイコールというものではありません。そこには、マーケティングの思想、顧客が手にするもの、テクノロジー、この三つの要素が、新たに加わっています。以下、それぞれについて説明していきますね。
サブスクリプションモデルのマーケティング思想
まずはマーケティングの思想。サブスクリプションモデルは「顧客志向」が前提です。これまでの定額課金制、例えば新聞や雑誌は、つくった新聞や雑誌を、ただ配送するだけ。新聞社が川上にあって、ユーザーは川下という、従来型のマーケティングの流通モデルです。こういったものは「製品志向」といいます。
最近、モノではなくコト、というようなフレーズを耳にしませんか?シーズからニーズへ、とか。これら「モノ」、「シーズ」は製品のことです。「コト」、「ニーズ」は、製品が持つ本質的な機能とか、ユーザーの本来の目的のことです。
この顧客志向の視点に立てば、自社で開発した製品がどれだけ優れた機能を持っていたとしても、顧客の本質的なニーズを満たしていなければ意味がないということになります。ニーズは流動的ですので、顧客のニーズを常に汲み取って、対応していく必要があります。
いつまでも、毎日、毎月、同じ新聞や雑誌を送り届ければよい定期購読とはそこが異なります。
(もちろん、新聞や雑誌が悪いと言っているわけではないですからね)
サブスクリプションモデルで顧客が手にするもの
サブスクリプションで顧客が手にするものは、製品ではなく、サービスになります。所有ではなく利用する権利、 これもサブスクリプションと定期購読の違いです。
車も購入して所有する時代から、そのうちシェアする時代になると言われていますよね。これもサブスクリプションです。車という製品、モノに目が行ってしまいますが、手にするのは利用する権利であって、所有権を手に入れることはありません。
ここでもやはり、モノからコト、という変化があります。車が欲しいのではなくて、移動手段が欲しいだけなので、わざわざ所有までしなくてもよいのです。使いたいときに使えさえすればよく、ローンを組んだり保険に入ったり税金を払う煩わしい思いをしたくないというのもニーズです。
そういった煩わしさは企業側が引き受けて、顧客は本質的なニーズに合ったサービスを利用することができるようになります。サブスクリプションは顧客中心なので、企業と顧客は必ずwin-winになるはずです。
サブスクリプションモデルのテクノロジー
サブスクリプションの根底にあるテクノロジーは、インターネット、クラウドです。これには二つの意味があります。
一つ目は、Dropboxのように、インターネット上で使えるサービスということ。クラウドストレージはインターネットがあって初めて存在しうるサービスです。最初に挙げたワークフローや勤怠管理も、インターネットがあるから紙の申請書類やタイムカードから移行できます。
もう一つは、顧客データがインターネットを通じてクラウド上に蓄積されるということ。これはマーケティング的な意味でとても大事なことです。サブスクリプションモデルが顧客志向を目指すにしても、どうやって顧客のニーズを汲み取るのか。それを可能にするのがインターネット、クラウドです。
これももはや当たり前のことですが、例えばGoogleで仮面ライダーを検索するとします。すると、別のサイトでニュースなどを見た際に、Googleの広告に仮面ライダーのフィギュアなどが掲載されていた、という経験はないですか?
もちろん仮面ライダーでなくても、深キョンを検索したら写真集が、アンチエイジングを検索したらセサミンや青汁が広告表示された、ということはありますよね?我々がネット上で検索して閲覧しているサイトのデータは、全てGoogleに知られていて、広告もパーソナライズされているのです。
同じように、ある企業のサブスクリプションサービスを利用すると、利用の傾向が企業側に流れ、より最適なプランを提案してきたり、新たなサービスが追加されたりするのです。
我々がサービスを利用する中で、情報が送信され、蓄積され、分析され、課題は解決されて我々が受けるサービスの質の向上につながっていきます。
サブスクリプションがこのような顧客志向を実現できるのも、インターネット技術があってこそなのです。
あらゆる業界でサブスク化が進む
第Ⅰ部では、 このようなサブスクリプションが、あらゆる業界で採用されている現状を紹介しています。
小売、メディア、モビリティ、新聞・出版、IT、そして製造業まで。本当に、あらゆる業界でサブスク化が進んでおり、驚くばかりです。
IT関連のサブスク化
サブスクリプションといえばIT関連ばかり思い浮かべてしまいますが、これも最初はなかなか受け入れられなかったようですね。AdobeもMicrosoftも、昔は大きな箱の中に、小さな説明書とCDやDVDが入って売られていました。ソフトウェアの箱って本当に無駄に大きくて邪魔なんですよね…。
コンピュータなんて合理化、効率化の申し子のようなものなのに、販売するときはあんな無駄にでかい箱に入れられて…。最近ではダウンロードコードが印刷されたカードが売られていたりしますが、未だにその横には大きな箱が並べられていたりして、前時代的だなぁと思ってしまいます。
製造業のサブスク化
製造業でサブスクリプションというと、イマイチ想像ができませんよね?でも、実はとても多く、そして身近だったりします。コマツのスマートコンストラクション技術を利用したコムコネクトというクラウドサービス。各複合機メーカーのメンテナンスサービス。共通するのは重機や複合機にセンサーが組み込まれていて、そのデータがクラウド上に蓄積される、又はメンテナンスセンターにトナーの交換があったことを知らせる仕組みになっています。
つまり、製造業においてはIoT技術が、サブスクリプションモデルを導入するのに用いられるということですね。
IoTと言えば、私はとても良い取り組みをしている会社を知っています。愛知県の旭鉄工という会社です。ここの社長の講演会を見に行き、会社の研修でも、社長をお招きして再度お話伺いつつ事例研究の対象とさせていただきました。
以前ブログでも書かせていただいております。
製造業として、自社の生産性向上のためのIoTを、パッケージに頼らず自前で構築した会社です。そしてそれがあまりにうまくいったので、新たに事業会社として起ち上げ、サブスクリプションモデルで外販しています。
製造業も製品、モノを売るのではなく、製品を通してサービスも売ることができるのです。工夫次第では旭鉄工のように新たなビジネスモデルを作り上げることだってできるのです。
卸売業の例示がないが…
さて本書では多くの業界でサブスクリプションモデルを取り入れられることが紹介されました。が、卸売業がありません…。弊社は売上構成比上は卸売業ですので、本書で卸売業が取り上げられていなかったのは残念…。
私自身、卸売業でのサブスク化だけは、イメージがわかなかったので、その点も本書で書かれていたら~と思っていたのですが…。
商社、卸売業といった間に入る商売ではどういったところでサブスクリプションモデルを導入できるでしょうか。商材は顧客によってまちまちですし、一つの顧客に対しても、複数の仕入先が存在します。
マスカスタマイズはサブスクリプションの要素の一つ。完全な顧客仕様、カスタマイズが要求される会社では、サブスクリプションは難しいのでしょうか。ここまで「なんにでも!」という感じで書いてきたので、自社の業種での適用ができないのは…うーん、という感じ。
折角なので、本書で紹介されていませんが、また自分で考えてみることにします(笑)。キーワードとしては、顧客志向、サービス化、インターネット、これにプラットフォームと定額(定期利益)を加えて。
卸売業のサブスクリプション化ができれば、私も事業部長に昇進です。報告できる日をお楽しみに(笑)。
まとめ的なもの
こうして本を読んで、改めて周りを見回してみると、本当に多くのものがサブスクリプションモデルを採用していて、知らぬ間にサブスクリプションという大波に飲み込まれてしまっていたことに気付きました。
昔は音楽や映画DVDは、買うかレンタルしていました。今でもパソコンのiTunesには、たくさんの音楽が残っています。これも、音楽ならAmazon Music、映画はAmazon Primeという定額サービスで、所有せずに楽しんでいます。
ユーザーにとっては、定額というのはなによりもわかりやすく、12ヵ月で分割されるので安く思えてしまうもの。たくさん加入すると痛い目を見ることになりますが、毎月の収支を組みやすくなるので、社会人だけでなく、学生にも安心です。
そのうえで、契約しているサービスがいつのまにかアップデートされ、便利になっていく。いままでこんなサービスがあったでしょうか。まさに顧客志向ですね。
こうしてサブスクリプションというブラックボックスの仕組みが分かってくると、いかによいサービスを享受しているのかも理解でき、現代というのは本当に楽しい時代だなと感じますね。
サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル
- 作者: ティエン・ツォ,ゲイブ・ワイザート,桑野順一郎,御立英史
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2018/10/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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最後に、最近のNewsPicksでピックされていたサブスクリプション関連記事を貼り付けておきます。サブスクってほんとに幅広いですよね。
ブログがスマートニュースに掲載されたときの気付き方と探し方まとめ。
- 何度目かのスマートニュース掲載
- 掲載に気付かない、見つけられない…
- 突如として激増するPVはスマートニュース掲載を疑え!
- スマートニュース内のどこに表示されるか?
- なんでスマートニュースに掲載されたの?
- まとめ的なもの
何度目かのスマートニュース掲載
私のブログがスマートニュースに掲載されました。
ブログを長くやっていると、掲載された経験を持つかたも少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。私は気付いているので4回、スマートニュースに掲載されております。
スマートニュースには「はてな」というカテゴリもありますので、もしかするとアメブロやライブドアブログ、FC2といった他の人気ブログよりも、はてなブログであるというだけで掲載されやすいのかもしれませんね。
今回掲載されたエントリーはこちら。
また、今回はスマートニュース内で掲載されているところをしっかりと確認し、スクショを残してあります。
カテゴリは「読書」、たわいもないことを書いているこのブログがスマートニュースに掲載されるのも、本のおかげです。皆さんも本を読みましょう(笑)。
掲載に気付かない、見つけられない…
さて、上記の通り、スマートニュースに掲載されるのは初めてではないのですが、どこに掲載されているかというのは、自分で探し出さないと、誰も教えてはくれません。
最悪、わけもわからずどっと増えるPVに嬉しいよりも恐れおののき、やっと気持ちを落ち着けつつもやっと自分のブログがバズった!軌道に乗ったんだ!などと歓びが込み上げてきたのも束の間、翌日からは何事もなかったかのような平常運転…という悲しい経験で終わることも。
ほんとに、スマートニュースに掲載されるのは嬉しいのですが、通知もなにもないのは不親切極まりない。そして掲載理由もわからない、挙句に手がかりもないでは一喜一憂すらできません。
と、いうわけで、私が何回かスマートニュースに掲載され、アプリで探しまくり、見つけ方をググりまくった結果、何となく見えてきた、「スマートニュースに掲載された時の気付き方、見つけ方」を書いてみたいと思います。
なお、私のブログははてなブログですので、はてなブログであることが前提になります。
最低限の準備として
まずスマートニュースに掲載されたことを気付きたい方というのは、やはりPV数をそれなり以上には気にされている方でしょう。それならば当然だとは思いますが、はてなブログのスマホアプリは入れていますよね?
もしアプリを入れていないのであれば、それだけで気付きから大きく遠ざかってしまいます。これを機に是非、スマホアプリをインストールしておきましょう。
そして、アプリを入れるだけでなく、iPhoneならウィジェットに表示させておきましょう。これで毎回アプリを開かなくても、ホーム画面内で簡単に日々のPVを確認できます。
このアプリを入れておくことは、スマートニュース掲載に早期に気付くための前提条件です。
突如として激増するPVはスマートニュース掲載を疑え!
PVが突如として激増した場合、スマートニュース掲載の可能性が高いです。これにリアルタイムに、とまではいかないものの早期に気付くためには、アプリを入れておく必要があるのです。
ですが、このアプリでは「PVがいきなり増えた!」ということに気付くことしかできません。スマートニュース掲載の可能性は高いですが、まだ現段階ではなんとも言えないところ。
アプリでPV増加を確認した後、ブラウザではてなブログの管理画面を開きましょう。そして、左のメニューから「アクセス解析」を開きます。もし、スマートニュースに掲載されていた場合、画像のようにアクセス元のURLが表示されます。
スマートニュースに掲載された場合、一覧の中に「www.smartnews.com」が確認できます。これでとりあえず、スマートニュースに掲載されたことが確定されました。おめでとうございます。
スマートニュース内のどこに表示されるか?
掲載された!というところで満足な方はそれでかまいませんが、せっかく掲載されたのですから、自分の目で掲載された事実を確認しておきたいですよね。
ただ、スマートニュースから掲載の通知が来るわけではないので、どこに掲載されているかは自分で探し出さなければなりません。最初に書いた通り、私のブログはほとんど読書に関するエントリーです。この場合はたまたま「読書」というカテゴリがあるので、とても見つけやすいのです。
スマートニュース内にピッタリ一致するカテゴリがない場合、探すのはなかなか手間がかかります。スマートニュースは各種メディアの他独自カテゴリがあり、この中のどこかに、自分のブログがあるはずです。
まずは「はてな」カテゴリから
だからといって、闇雲に1から順番にカテゴリ内を探すというわけにもいきません。カテゴリもたくさんありますから、かなり時間がかかってしまいます。
ですので、まずは「はてな」カテゴリの中にないか探すのが先決。当然この中にアメブロ等が混ざってくることはないので、はてなユーザーは優遇されていますね。
ありませんでしたか?そうしたら次のカテゴリを探してみましょう。
「オピニオン」カテゴリはその他扱い?
ここにあるのでは、という明確な根拠はないのですが、みたところ雑多な話題が多く、またここにもはてなブログのエントリーが多く見受けられます。
「はてな」カテゴリになければ、次はここ、「オピニオン」カテゴリを探してみましょう。
意外と「トップ」も捨てがたい?
私も今でこそすぐに見つけることができますが、以前はどこに掲載されているのかわからず、見つけ方などをググっていましたが、その時に参考にしたサイトには、意外な伏兵として「トップ」を挙げているものもありました。
人気アプリ、スマートニュースのトップですから、注目の記事ばかりが並んでいます。日経新聞や朝日新聞、共同通信などのメディアに個人ブログのエントリーが並ぶということは、ほとんど考えられません、が、ここも念のため確認してみましょう。
これ以外となると、「まとめ」、「話題」あたりでしょうか。スマートニュースで残念だなと思うのは、記事を検索できないことですね。結局上記のカテゴリになければ、ひたすら各カテゴリを除いていくしかありませんね。
なんでスマートニュースに掲載されたの?
これも公表されている基準は無いようですが、感覚的にははてなブックマークの新着に掲載されるのと同じ条件ではないかと思います。はてなブックマークの新着は、ブックマークを三つ獲得することです。
人気ブログでは、エントリーすれば毎回二桁のブックマークを貰っている方もいらっしゃいます。はてなブックマークでも常連さんです。このような方は、スマートニュースにも毎回掲載されているのでしょうね。
掲載される期間ですが、これはどうでしょう。先日掲載されたときは、はてブの新着には残っていたのに、スマートニュースからは先に消えてしまいました。掲載記事数に制限があって、古いもの、閲覧数の少ないものから外れていくのでしょうか。
明確な基準はわからず、憶測になってしまいますね。
まとめ的なもの
このようなエントリーを書いておいて言うのもなんですが、ブログはPV数を追い求めるものではなく、書きたいことを書いて、読んでもらった結果としてはてブ新着に掲載されたり、スマートニュースに掲載されればよいですね。
PVが増えたり他サイトに掲載されたことに一喜一憂していては、そのうち書くことが楽しくなくなってしまうかもしれません。読んでもらうためのSEO対策、多くの人に知ってもらうためにはてブ新着掲載を期待する。期待のし過ぎは禁物、ですね。
それでも折角スマートニュースに掲載されたとなれば、探し出したいというのが人情。もしそのようなときに、このエントリーが役に立てば幸いです。
『世界の教養365』ついに読了!で、世界の教養は身についたのか?
『世界の教養365』ついに読了!
昨年5月に買ってちびちびと読んでいた文響社の『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』、読み始めてから約8ヶ月を経て、ついに読了です。
え、ちょっと待って!「1日1ページ」って書いてあるじゃん!と、突っ込まれそうですね。確かにそうなんですが、率直にお答えしますと「そんなまどろっこしいことやってられない!」ということです。
たった1ページで終わりなんて…そしてその代わりに365日、毎日読まなくてはいけないなんて…耐えられません!!
じゃあ8ヶ月間、1日2ページ読んだのかと言われれば、2週間読まず、20ページ一気読み、一ヶ月読まず、50ページ一気読み、そんな感じでした。日々継続する、継続を癖付ける、という目標は、全く達成できませんでしたね。
何度でも言います。「そんなまどろっこしいこと、やってられない!」
いつのまにやら大ベストセラーに
『世界の教養365』を購入した当時にも、オビには「シリーズ累計100万部!のベストセラー」とありました。これは日本ではなく、本国アメリカでの原書の数字ですね。
でも、1日たった1ページ、365日で世界の教養を身に付けられるというコンセプトは、ニーズがあってハードルは低く、これは日本でも売れるなという予感はありました。実際大人気で私が欲しかった時は入荷待ちでしたし、その後テレビ番組の中でも特集が組まれたそうです。 テレビ発の口コミ効果はすごいですね。
発売されて以降、書店の「売れている本、人気の本、ベストほにゃらら」には常に『世界の教養365』が一角を占めていました。これだけ長くランキングに居座るというのは、人から人へ、口コミでじわじわと広がっていったということでしょう。年末に書店で年間ランキングが公表されていましたが、小説なども含めた総合部門で、堂々の8位です。日本の教養ブームが見て取れます。本国だけでなく日本でもベストセラー。もしかすると、世界中至る所でベストセラー担っているのかもしれませんね。
最近はなにやらプレゼントのようなリボンのついたカバーになっています。自分用ではなく、プレゼントに買っていく方が多かったのでしょうか。人にオススメしたくなる気持ちもわかります。
また、世界の教養を身に付けたいのは社会人だけではありませんね。子を持つ親も、自分で読んで、子供にも読ませたい本なのだと思います。昔の百科事典などと比べれば全然安価ですし、プレゼントにも最適かもしれませんね。
もし少し内容を見てみたいということであれば、電子書籍で試し読みも可能ですし。1日1ページだから、この本は電子書籍でのスキマ時間読書に向いているかもしれませんね。
『世界の教養365』お世話になっております
これだけ人気の『世界の教養365』、ちょこっとだけ、内容、感想をレビューした6月のエントリーが、どういうわけかGoogle検索からの流入を長らく稼いでいます。
Googleのサイト所有者向けサービス、Search Consoleのデータを見てみると、この『世界の教養365』のレビューエントリーがいかに人気だったかということとともに、このブログのPVを稼いでくれていた事実がわかります。
12月からは『メモの魔力』が猛追してきていますね。こちらもクリスマスのエントリー以降、弊ブログを支える新たな柱のひとつです。
ですが、10件表示されているうちの8件が『世界の教養365』のキーワード…。頼んでもないのに当ブログの屋台骨です。
いやこのブログ、一応タイトルは「サラリーマン行政書士」となっていますし、 ちょくちょく行政書士ネタも投下しています。サラリーマンサイドのエントリーもありますし、むしろ読書レビューのエントリーに偏重してるのは10月のブログ再開後。6月頃はそれほど読書レビューなんてほとんどなかったはずなのに…。
そう言いつつも、何気に『世界の教養365』の掲載順位が高いのが自慢だったりしますが(笑)。それほど凝ったSEO対策をせずとも検索順位が上がるのは、はてなブログ様様といったところでしょうか?
まぁ、PVを増やすことが目的ではないですが、見てくれる方が増えるとその他のページもついでに読んでもらえます。そういったことの積み重ねがページランクのアップ、検索上位表示などに繋がり、本当に読んでもらいたいエントリーにもたどり着いてくれる読者が増えるというもの。
熱心に書いた最近のエントリーも、半年前ならほとんど読まれずに消えていってしまったはず。さらに半年後には、『メモの魔力』のおかげで、さらに多くの方に読んでもらえるブログになっていたいですね。本当に、虎の威を借りたブログです。
キーワード各位
いつも大変お世話になっております。
で、世界の教養は身についたのか?
これが一番大事なところですので、早速結論を言います。世界の教養は1日1ページでは身につきません。それは以前のエントリーでも書いております。たった1ページ、1日5分を365日継続しただけで、各テーマの教養が身についたら、こんな楽なことはありません。これが率直な感想です。
ですがこの本は、世界の教養を身に付ける「きっかけ」になります。というか、きっかけになるために生まれてきた本と言ったほうがよいでしょう。
これを読み始める前に、哲学に興味を持っておりました。ただ、哲学の大家、その著書、主張などは知りませんでした。アートの歴史も、多くの宗教も、今のテクノロジーの根底にある物理学などの知識もなく、どこから手を付けてよいかわかりませんでした。
もちろん今、そういった知識であふれているわけではありませんが、本書を読んだ結果、ある程度興味のある分野をみつけることができ、知識を深めるための優先順位も見えてきました。
そうしたことから、本書の役割は、「あたながどういった分野に興味を持っているのか自らに気付かせ、その知識を深めるアテンドをしてくれる」というもの、とったところでしょうか。
『世界の教養365』を読み終えた感想
感想の前に、まず本書を読み終えて気付いたこと。それは『世界の教養365』というタイトルなのに「364」で終わってるやん!!ということ。なぜかって?364を一週間の七日で割ってみてください。きりがいいでしょ?そういうことです。
日本に関するテーマの少なさ
そんな冗談はさておき、読み終えた感想、ですね。それは日本に関するテーマが少ない、ということ。この本がアメリカで書かれた本であるということを差し引いても、どうにも少ない。
見落としもあるかもしれませんが、「葛飾北斎」と「神道」の二つだけしかないのではないでしょうか。364テーマのうち、たった二つ…。あまりに少なすぎではないでしょうか…。
歴史なら、世界でも類を見ない平和な時代を作った家康は、入っていても何ら不思議はありません。
文学なら、毎回ノーベル文学賞候補に挙がる村上春樹はどうですか?芸術なら葛飾北斎の他にも東洲斎写楽もいるし、横山大観や伊藤若冲は?歌舞伎や狂言、俳句や短歌、日本も芸術は幅広くありますよ?化学ならばiPS細胞、野口英世、湯川秀樹。音楽は近代まではあまりいないでしょうか…。哲学は、西田幾多郎?宗教は…外から入ってきたものの派生が多いですね…。
世界の日本に対する評価は低いのか…
日本人視点で考えると、たくさんあるのになぁと思えてしまいますが、海外からの評価となると、まだまだなのでしょうか。 全方位海に囲まれた島国日本、文化もなにもかも自前主義で、地産地消で、独特だけれども世界の美意識に通じるところが少ないのか。
もちろんレベルの高い低いの違いではないでしょうが、やはりマジョリティたる欧米人のアイデンティティに突き刺さるものは、アジアの極東、日本にはないということなのかも。
ただ逆に考えると、日本が海外に対して自分のよさをアピールできていないとも言えます。さらには、アピールできないのは日本人自身が日本のよさを理解できていないからなのかもしれません。
『世界の教養365』に「脱近代」の必要性を見た
おっとこれは、いわゆる「脱近代」、「近代の超克」というテーマではないですか?落合陽一先生はずっと、脱近代、近代の超克をテーマとして掲げておられます。著書を開けば、タイトル、目次、本文、いたるところに「近代」をどう乗り越えるかということが書かれています。
明治時代、こぞって欧米の文化を取り入れ、言葉を日本語訳し、中には日本には元々存在しない概念まで無理やり直訳した。その結果、融合しきれない欧米文化の中でアイデンティティを失ってきた日本人。
そもそも欧米と一括りにするけれど、欧と米とは根は同じでも、国家や文化の形成の過程は全く異なります。欧州でもイギリスと大陸側の違い、フランスとドイツの違い、当たり前に違いが存在します。
そんな文化を一括りにして取り入れたのですから、腹落ちするわけがありませんね。もちろん、もともとの日本が培ってきた固有の文化もあるわけですから、明治になって急に、今日から欧米な、と言われても、対応できません。
そんな近代を理解して、脱却できるかが、今後の日本の課題ですね。日本人が日本を改めて見つめなおし、日本を理解し、日本人としてのルーツ、アイデンティティを見出すことで、成熟した社会の中で日本の価値を対外的にも示していける。
そうすると、10年後の『世界の教養改訂版』には、日本に関するテーマが10個は掲載されることになるかもしれませんね。
まとめ的なもの
『世界の教養365』、ページ数にすれば、364テーマですから364ページ。それほどボリュームが多いわけではありません。ですが、毎ページ異なるテーマが取り扱われていて、分野も日替わり。読んでみると分かりますが、なかなか一気に読むのはしんどいです。
1日1ページという縛りが我慢できずにまとめ読みしてしまいましたが、まとめて読んだところすいすい進めるものでもなく、あまり興味が持てないテーマが続くときは正直辛いと思うこともありました。
とはいえ、概ね楽しんで読むことができましたし、本当にさまざまな方面にアンテナを伸ばすきっかけになりました。もし本書にある世界の教養すべてのテーマに興味が持てたなら、より多く、感度の高いアンテナを張り巡らせることができたでしょう。
そう思うと、一度きりではなく、またふとしたときにペラペラとめくってみるのがよいかもしれません。1ページ1テーマの『世界の教養365』ですから、いつだってまた、気軽に読むことができますね。
また先にも書きましたが、電車通勤の方であれば、電子書籍版をオススメします。スキマ時間で読めば、私が挫折した1日1ページだって苦ではないでしょう。電子書籍版なら試し読みも可能なので是非、オススメです。
- 作者: デイヴィッド・S・キダー,ノア・D・オッペンハイム,小林朋則
- 出版社/メーカー: 文響社
- 発売日: 2018/04/27
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『サピエンス全史(下)』資本主義という虚構を回す。
『サピエンス全史』上下巻読了
上巻に続き、『サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福』も読了。上巻が面白かったので、下巻も続けて、一気に読んでしまいました。
下巻は紀元後のお話で、学校で習った歴史の人物なども多く出てきます。 その分話も身近かなと思いきや、むしろ上巻よりも難易度は高くなっている印象。上巻に引き続き、サピエンスが作る文明の構造の根底には「虚構」がありますが、下巻では虚構はさらに複雑なものとなり、文明も高度化していきます。
科学革命
近代に至って、「帝国、科学、資本」というものが生まれ、それぞれが相互に作用、フィードバックループしていきます。これが『サピエンス全史』下巻最大のテーマ、科学革命です。サピエンスが作り上げた文明は、この科学革命によって爆発的な発展を遂げます。
帝国という虚構
下巻は上巻の第3部「人類の統一」の続きから始まります。宗教についての話で、これもサピエンスが生み出した高度な虚構です。宗教により生み出された社会構造、ヒエラルキーは、ヨーロッパにいくつかの帝国を生み出します。
この帝国が、サピエンスの科学革命をけん引していく主体となっていきますが、帝国単体では科学革命は起こすことはできません。サピエンスが科学革命を起こすには「科学」そのものの発達を待たなければならず、1500年頃までは帝国間で小競り合いを繰り返しました。
無知を受け入れ科学を得る
虚構を手に入れた認知革命以降、サピエンスは多くの知識を深めるとともに、無知であることを受け入れてきました。そのことが、サピエンスの好奇心を高め、大航海時代へと向かわせます。
この章はとても興味深いですね。ソクラテスは自分のことを、「無知の知」を認識している点であなた方より優れていると触れ回って、裁判にかけられて処刑されました。でも、多くのサピエンスは無知の知を認識していたのかもしれません。ときどき、慢心して痛い目をみつつ、概ね無知を自覚して知識の探求に余念がないのが我々サピエンスのようです。
私もサピエンスの端くれ。読書をすればするほど知識量が増えるのを実感すると同時に、知らない世界があまりに広すぎることを実感します。知識の絶対量が増えると、その周辺により多くの知らないことがあることを知って、またそのことについて知識を付けて、さらに知らないことがあることを知る。
個人の限られた短い人生で得られる知識量には限界があって、それゆえに知識は個人所有するのではなく、集合知に都度アクセスすることが効率的です。これを実現するために多くの虚構が作られ、用いられています。
こうしてサピエンスは、集合知の蓄積により科学という力を身に付けました。ただ、科学は進歩すればするほど、研究にお金を費やすようになります。すると、誰がこのお金を捻出するのか、ということが問題になってきます。
資本はどこに向かうか
サピエンスが作り出した虚構の一つに貨幣があります。これはいままでの虚構、宗教やイデオロギーと異なり、サピエンス個人や一定の集団単位の信仰、規律を越えて共有される虚構です。日本人でもイスラム教徒でも、人種や信仰を越えてUSドルを使うし欲しますよね。
この貨幣は信用で成り立っていて、信用経済は信用創造により資本主義社会を大きくします。ときどきはじけたりしますが、これにより、貴族たちは贅沢に費やすよりも、お金を投資に回すようになります。
さあ、これで駒がそろいました。サピエンスの興味に従って科学の分野は多岐にわたり、帝国は隣の帝国との植民地競争に勝つために研究を進める科学に優先順位を付け、資本家はさらに富を得るために優先順位の高い科学に投資する。
このサイクルを著者ユヴァル・ノア・ハラリはフィードバックループと読んでいて、これによりサピエンスの文明は爆発的に発展したのだと言います。
まとめ的なもの
『サピエンス全史』、読むのは面白くてさくさく読んでしまいましたが、振返ってみると、書かれていることは簡単なことではありません。でも難しくて読めないわけではなくて、読み進めやすい文章で書かれています。
難しい内容を難しいまま書くことは、その知識さえあれば誰でもできますが、誰でも読めるように平易に書くのは、読者への配慮と文章力のなせる業ですね。それをブログでまとめ切れない私の文章力…。 強引にまとめてみましたが、まぁ、うん…。
面白さにかまけて理解できないまま読み進めてしまった部分も多いようです。特に、文明の構造は見えてきましたが、人類の幸福の部分は思い返しても理解が曖昧です。『サピエンス全史』は面白いと思えた本だからこそ、理解不足のままではもったいない。また改めて、二度、三度と、理解のために読み込みたいと思います。
『サピエンス全史(上)』人類は虚構の上に成り立っている。
周回遅れですが、『サピエンス全史』読みました。
読みたいと思いながら長らく積読されていたシリーズです。『サピエンス全史(上)文明の構造と
アメトーーク!でも取り上げられたり、本書からの引用のあるビジネス書もあったり、さらに続編の『ホモ・デウス』も発売されていたり。既に周回遅れ感のある『サピエンス全史』です。
ただ、名著は名著、いつ読んだってその価値は変わりません。何周遅れであろうと、読む価値のある本ですね。
『サピエンス全史』は構造のお話
普段はビジネス書の類ばかり読んでいますが、私も歴史は好きです。過去のエントリーでも、歴史に関するものがいくつかありますね。
もちろん、歴史はビジネスに転用できる学びがとても多いので、歴史ロマンを追い求めるのと、現実の課題解決のヒントにするのと、両方の意味合いがありますね。
歴史カテゴリというと、ある特定の人物が主役だったり、○○戦争、○○革命といった特定の事象、期間にスポットを当てたものが思い浮かびます。
少し変わったところでは『家康、江戸を建てる』があって、誰のとか○○時代の、ではなく、江戸という都市の成り立ちを描いたものです。
この『サピエンス全史』は、そのような人や一時代を描いたものではありません。今の
直立というハイリスク、認知革命というハイリターン
サピエンスは立ち上がったことで大きな脳を獲得し、道具や火を使うことを覚えた。これにより他の種よりも反映することができた。というのが、我々が習ってきた
本書『サピエンス全史』では、これをより深く検証しています。そこから見えてくるものはあまりにも意外で、リスキーで、わくわくするものでした。
クララとガンダムより昔に立った祖先
我ながらくだらないタイトル…。さて、脳というのは動物の器官の中でも最もエネルギー食いだそうです。つまり、脳が大きくなるということは、飢餓にもつながるハイリスクなことらしいのです。道具や火を使えるようになるため!というのは結果論。立ち上がって脳が大きくなるまでは、そんな便利なものを思いつくだんてことはわからなかったわけで…。ホモ・サピエンスよりもさらに200万年も前の我々のご先祖様は、一体何を考えて立ち上がったのでしょう…。
結果として、もう一つの大飯食らいな器官である腸が短くなったことで、燃費の悪い生き物になって絶滅することなく、無事に。ご先祖様、リスクテイカー過ぎますね。
高度な言語と虚構がサピエンスを勝者にした
この虚構というのは、『サピエンス全史』上下巻通して重要なテーマとなってきます。虚構というのが何なのかを考えながら読むと、『サピエンス全史』をより楽しむことができるでしょう。
約10万年前、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの最初の遭遇は、身体の大きいネアンデルタール人の勝利に終わったそうです。その後、ホモ・サピエンスは言語能力を高め、虚構を創り出すに至りました。
最初の虚構は、「ライオンは我々の守護神だ」といったようなもの。ただの事実情報を伝えるための言語だけでなく、架空の物事を創り出したのは、サピエンスの他にはありません。
この能力を、本書では「ゲノムを迂回する」と評しています。「ライオンが来たぞ!」という情報はその場限りですが、「ライオンは守護神だ」という神話は、遺伝子に刻み込まれずとも語り継がれます。これこそ認知革命のインパクトです。
高度な情報伝達機能を手にしたサピエンスは、ネアンデルタール人を滅ぼし、その後一気に全世界に広がりました。最初のホモ属は250年前に進化し、ホモ・サピエンスに進化したのは20万年前。それから他のホモ属、ネアンデルタール人は併存していましたが、7万年前にホモ・サピエンスに認知革命が起き、6万年後の1万3000年前にはサピエンス以外の
直立したことで脳を大きくしたホモ属は優位に立ち、虚構を作る高度な情報伝達能力を得たサピエンスのみが生き残ったというわけです。
いばらの道を歩むことになった農業革命
認知革命のインパクトを目の当たりにして、『サピエンス全史』最大の革命だと思いきや、農業革命はさらに大きなインパクトをサピエンスにもたらしました。
我々は唯一食物連鎖から解放された種で、自らをホモ・サピエンス(賢いヒト)などと読んでしまうくらい、実際に賢い種のはずです。ただ、農業革命の章を読んで、そんな自尊心は吹き飛んでしまいます。
今でこそ農耕によサピエンスの食糧事情は安定しています。ですが、初めてサピエンスが農耕に手を出した時代は、収穫は保証されたものではありませんでした。農薬もなければ治水技術もない時代ですから。大雨、洪水で田畑が流され、 日照りで育たず…。天候により食糧が左右される社会は、狩猟社会よりも不安定だと言います。また一か所に定住することになったことで、病気が蔓延しやすくなり、縄張り争いの熾烈になったのだとか。
世界中で人口を増やす一方で、狩猟社会だったころよりもストレスフルな人生を送ることになったサピエンス。表紙にある「農業革命は史上最大の詐欺」というのもうなずけます。
バイソンに一突きにされる危険がなくなったと思ったのに、ほんの数百年前まで、農耕によるサピエンスの食糧事情は、決して楽なものではありませんでした。
面白いのが、サピエンスと一緒になって世界中に頒布することになった種があるということ。その種は、イモ、麦、コメ等です。もしかするとサピエンスを詐欺にかけたのは、彼ら?
まとめ的なもの
『サピエンス全史』、とても面白くて、発見がいっぱいで、ほっとしました。 長らく積読していて、その間期待も高まっておりましたので。
内容は深いのですが、難しい用語などもあまり出てこないため読みやすく、普段読書をしない人でも全然問題なく読める本だと思います。タイトルから難しそうな印象を持っていたので、ちょっと構えて読み始めたのですが、その必要はありませんでしたね。
オビに「全ビジネスマン必読の新しい教養書」とありますが、ビジネスマンのみならず、老若男女問わず全
プロセスと結果、どちらが大事か問題。
プロセス「が」重要なのか?
最近社内の若手がやたらプロセスプロセス言っています。
曰く、「結果ばかり追い求めてプロセスを大事にしないからうまくいかない」らしいです。なにやら穏当でないですが、色々と違うんじゃないかと思うところがあるので、今日はそんなことを書いてみます。
彼のプロセス発言に対して、私は「そうですね」と「本当にそうでしょうか?」という二つの感情を抱きます。
どういうことかというと、「確かにプロセスは大事だね」という当たり前のことと、「結果を追い求めているのに、プロセスを大事にせずにうまくいかないなんてことがあり得るの?」ということ。プロセスは大事に決まっていますが、プロセスも結果も両輪ですので、結果を求めてプロセスを軽視するということは、本来あり得ません。
単純なことで、結果を追い求めれば因果関係にあるプロセスを重視せざるを得ず、プロセスを重視すれば結果も付いてきます。片方を軽視すればもう片方も歩調を合わせるものだと思っています。
卵が先か鶏が先か、ではない
世の中で因果関係のあるもののなかには、卵が先か鶏が先かという議論がなされるものがあります。どちらを重視するのか?優先すべきはどちらか?というものです。ですが、プロセスと結果について言えば、この議論にはなるはずがありません。絶対に、「結果」が大事だからです。結果こそ追い求めるものです。
かく言う私も、結果を追い求めたからこそ最短最年少係長になることができたわけですからね。
結果が全てというと極論のように思えますが、やはり結果が全てです。ただ、一言で括ってしまうとあまりに表面的に聞こえて、プロセスを追い求めることに意味がない、というような印象を受けます。そうではありませんね。
「結果が全て」はオールオアナッシングではない
例えばどれだけ頑張っても、結果として当初の目的を達成することができないことがあります。例えば野球の選手なら、メジャーリーガーになれるのは一握りの人です。メジャーを目指して小さな頃から頑張ってきても、相対的に抜きんでていなければ、メジャーリーガーになることはできません。でも、日本のプロ野球選手にはなれるかもしれません。それがダメでもBCリーグもありますし、社会人野球があります。
メジャーリーガーにはなれなかったけれど、日本のプロ野球選手にはなれた、そういったもろもろ含めて、結果が全て、ということです。
結果が全てというのは、1か0かとか、オールオアナッシングということとは異なります。勉強だって、目標の大学に入れなかったからって、覚えてきたことが無駄になるわけではないですよね。同じことです。
プロセスと結果の主従関係を間違えないこと
大切なのはプロセスと結果の主従関係を間違えないこと。最初に書いた若手は、プロセスを重視するあまりプロセスと結果の主従関係を逆にとってしまっているように思います。プロセスは過程、じゃあ一体何に向かう過程なのでしょうか?当然、結果です。この結果というのは、プロセスを経てたどり着く前は、目的、目標と呼ばれます。
つまり、目的目標を達成するためのプロセス、過程なのです。目的がないのにプロセスなんて、存在しようがないですからね。目的がないのであれば、それはプロセスではなくてフラフラしているだけ。
このことからも、プロセスと結果は主従関係がはっきりしており、卵が先か鶏が先かという議論にはなりようがないことがわかります。プロセス重視か、結果重視か、もちろん主たる結果を重視すべきです。
こんなことを言うと、その若手から「わかってない!」と言われそうですね。実際彼が言うには、予算達成という結果、目的の為に、不正(プロセス)をしてもいいの?営業マンを詰めて無理な残業させていいの?とのこと。
ですが、そういう話であればもちろん「そんなのダメだよね」となります。あれ?若手君に賛成なの?そうではありません。これはこれ、それはそれ、別の話なんです。
最初の発言「結果を追い求めてプロセスを軽視し、うまくいかない」と「予算達成のために不正をしてもいいか」という発言は、一見、後の発言が最初の発言の例示になっているように思えます。ですが、よくよく考えればそうではないことに気がつきます。
先に言っておくと、後の発言にはなんら問題、異論はありません。普通にダメだよねという話ですね。その後に起こりうる結果を考えられていないから、そんなプロセスになったのです。全く結果のことを考えられていません。
結果重視・プロセス軽視による失敗という矛盾
最初の発言はそもそも間違っていて、繰り返しになりますが、結果を追い求めるのに、そのプロセスを軽視することなんてありえません。だって、結果のことをよく考えて追い求めたなら、うまくいっていないはずはないですから。もちろん毎回大成功とはいかないですが、一定の成果を残すはずです。
間違いの根本は、「それ、本当に正しく結果を求めていたの?」ということ。結果を欲することは誰でも同じですが、それに向けた正しい方向付けや必要な努力などをちゃんとしたのか?というところをよく考えましょう。
最初の発言の例は、結果を導き出すプロセスの算定が甘かったのでしょう。部下や従業員に対し、あれやれこれやれと方向性の間違った指示して、故に結果も出ず、さらに結果を求めて間違った指示をだし、何にもうまくいかない。つまり、結果を欲しがった割に本気で結果について考えておらず、実はプロセスだけでなく結果も軽視していたに過ぎません。
まとめ的なもの
蓋を開ければ単純なことですが、このようなことは会社の現場で日々起きていますね。私は、書いてきたとおり、結果重視であればプロセスもそのようになるし、手段の集合体がプロセスとなって、結果として目的が達成されると考えています。ですから、うまくいかないときは求める結果について熟慮できていないんじゃないかとか、目的の本質を自分の中でちゃんと理解できていないのではないか、と考えます。
これは私が色々と経験してきたなかでこう思い至ったということであって、仕事への携わり方は人それぞれではあります。現場従業員と管理職、経営者ではそれぞれ重視すべき事柄も違いますし、KPIも違います。
ですが、結果どうなる、ということを抜きにプロセスを構築することはできませんし、結果を考えるからプロセスの精度もあがるということは、私が仕事をする上での軸となっています。
参考になるかはわかりませんが、本日は思っちゃったんだから仕方がない、のコーナーでした。
『小説 吉田松陰』歴史上の偉人と現代ビジネス。
吉田松陰からの学びを現代に活かす
今年の一冊目は『小説 吉田松陰』でした。著者は童門冬二。以前にも『上杉鷹山の経営学』や『小説 平将門』を読んだことがありますが、歴史の教訓を現代ビジネスに活かそうと考えたとき、童門冬二の小説はヒントが多いように感じます。
実際、Wikipediaの童門冬二のページにも、主題として「経営管理、組織論」と書かれています。元々都知事の秘書、政策室長を歴任してきた方ですので、そのあたりのノウハウが詰め込まれているのでしょう。上記エントリーで紹介している『上杉鷹山の経営学』も、会社の集合研修の課題図書であり、上杉鷹山が場面場面でとった行動を取り上げて、組織論を学びました。
吉田松陰については以前のエントリーでも取り上げていますが、深く、響く言葉が多く残されていますね。名言好きですから、また吉田松陰の名言集でも買ってみようかなと思います(笑)
吉田松陰の小説はいろいろあるけれど
幕末、明治維新と言えば誰?と聞かれれば、吉田松陰はかなり上位にくると思います。久坂玄瑞や高杉晋作という幕末の志士や、明治政府で近代日本を作り上げた伊藤博文、山県有朋等を輩出した松下村塾の先生ということで有名です。
ですから、吉田松陰を扱った小説はたくさんあります。そのなかでも、おそらく本書ほど牢屋の吉田松陰を描いた小説はないのではないでしょうか。
普通は全国を巡り歩いた話や、黒船に乗り込んだ話、松下村塾での塾生との逸話など、華のある部分をクローズアップする物だと思いますが、あえて、野山獄での描写にかなりのページを割いているのには理由があるのでしょう。
おそらく、吉田松陰のまっすぐで前向きな純粋性と、それを組織論に繋げていきたいという意図があるのでしょう。
テロリストとしての吉田松陰
吉田松陰の純粋性は、結局のところ自らの破滅を招きます。とはいっても、吉田松陰は自分で29歳で死ぬことを選んだようにも思えますが。というのも、安政の大獄での処刑は、老中暗殺を画策していたと自白したことが原因だからです。
自ら告白してしまったのはなぜなのか。純粋な心で暗殺計画の意図を説けば、幕府にも考えを受け入れられると思ったのか?それとも、別の覚悟があったのか。本書では、自らの死が同士を奮い立たせる覚悟での自白、という立場をとっています。私もそう思います。
ここで一句。
身はたとひ 武蔵野野辺に朽ちぬとも 留めおかまし 大和魂
これは吉田松陰の句で、確か留魂録に書かれている句です。これを見たら、やはり吉田松陰は死を覚悟の上で、大和魂を貫いたということが想像できますね。
純粋ゆえに原理主義的であり、日本の未来を思いつめた結果、塾生たちに檄を飛ばし、自らの死をもって士気を鼓舞した。このように感じました。
革命家というのはいつも犯罪と紙一重ですね。現政権を打ち倒すことができなければ、正当化されることはありません。ですが、本質的なところは、革命家もテロリストも、変わらないのかもしれませんね…。
現状打破の想いが尋常じゃなく強く、想いを遂げることとなると、周囲が見えなくなる。テロリストとは良い意味合いは全く持たない言葉なのかもしれませんが、あえて「良い意味」で、吉田松陰はテロリストなのだと思いました。
ビジネスと吉田松陰
そんな吉田松陰という男の人生から学び、ビジネスに活かすべきポイントはいくつもあると思いますが、三つに着目してみました。
- 基礎体力となる知識を身に付けるための読書量
- 知識を活かすための行動力
- 好奇心ドリブン
三つめはちょっとこじつけ感ありますが(笑)。一つずつみていきましょう。
基礎体力としての読書
まずはその臭覚を支えるのは読書。今と違い、テレビやインターネットなどはありませんし、知識を得るためには読書が欠かせない時代でした。吉田松陰はかなりの読書家だったようで、読書による豊富な知識があったから、アンテナに引っかかる情報を処理していくことができたのでしょう。
現代はインターネットもあれば、Amazonもあり、Kindleもあるので、読みたいと思ったら直ぐに知識を得られるインフラが整っています。新たな勉強にチャレンジする環境としては、現代ほど恵まれた時代もないでしょう。
Kindleなら紙の本よりも安いものも多いため、専門外の分野に手を伸ばすハードルはかなり下がっています。私も今まで読んだことのないようなものを、意識的に読むようにしています。そうすることで、今まで見えなかった世界が見えてくるというものです。
知識を活かすための行動力
吉田松陰は読書や勉強ばかりで頭でっかちになるのではなく、全国津々浦々を自らの足で回り、時には藩の許可を正式に得ないまま東北へと出かけてしまうことも。また、浦賀にペリーが来航していると聞いて、黒船へと乗り込みアメリカへ連れて行ってくれるよう直談判します。当時としては打ち首となってもおかしくないような大罪ですが、そのリスクをかえりみることなく、計画を実行してしまいます。
老中暗殺のための武器を貸してもらえるよう藩に申し出たり、自分の命すら倒幕の起爆剤にしてしまう行動力。これは吉田松陰がテロリストと言われる所以ですが、この行動力、実行力は見習いたいものです。
どれだけ知識を付け、問題意識にをもって、課題設定できたとしても、行動して解決しなければただの傍観者です。世の中には行動する者としない者の二つしかありません。行動しないのであれば、知識があってもなくてもなんら変わりません。
最前線に立て!ということではなく、自分の立場、役回りをわきまえて、できることをしていく、ということです。私は、あなたは、会社の中で、今あたえられた場所で、何ができるでしょう?
好奇心ドリブン
知識も行動力もとても大切なものですが、これも先立つ好奇心があればこそ。好奇心もないのに知識を付けようと思うことはありません。義務教育だって、好奇心をもって主体的に取り組んだ子とそうでない子の間に、成績表上の差異が生まれます。
好奇心があったからこそ、黒船に乗り込むという行動力に繋げることができたとも言えます。好奇心とは、考えることですね。現実としての知識や事象を目の前にして、なぜ?なんで?どうなってるの?と考えて、知りたい!となって初めて行動に移すことができるんです。
会社の現状をちゃんと見れば見るほど、問題が転がっていることに気付くはずです。もし見つからないのであれば、それは好奇心が欠けている証拠。もっと会社に興味を持ってみましょう。好奇心を持つことと忠誠心や会社愛とは全く別次元ですので、気持ち悪がらずに会社をよーくみてみましょう。知識を付けて行動すべき何かが、きっと見えてくると思います。
まとめ的なもの
童門冬二の小説はまだ三冊しか読んでいませんが、経営管理、組織論という特徴意外に、主人公をとても魅力的に描いていると思います。それは主人公だからよく書こうというのとは違います。
例えば『平将門』では、愚直すぎてもどかしさを感じる場面も多くあり、カッコいいだとか、完璧とは程遠い人物像が描かれています。でも、まっすぐで、素直で、人間的な魅力を強く感じます。
これは童門冬二の描写力はもちろんのこと、歴史に名を遺す偉人には、偉業を成すための人間力をっているということなのでしょう。この人間力はコミュニケーション力であって、これがあるからこそ自身の知識や行動力を周りに波及させ、自分一人の時の何倍もの力を用いることができたのでしょう。
ノウハウなどのハードスキルと異なり、人間力は一朝一夕には身に付きませんが、こういった面も日々考えて伸ばしていかなければいけませんね。
落合陽一の『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書』通称ゼロヒャク教科書から学ぶ人生100年時代の学び方。
日本史上最も長いタイトルの本(たぶん)
表紙を隅から隅までタイトルで埋める本。文字数なんと43文字!こんな本、初めて見ました。落合陽一の『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書』、通称『ゼロヒャク教科書』です。
最初から『ゼロヒャク教科書』として、「はじめに」の中で何の略称なのか説明してもよかったのではとも思いましたが。でもこのタイトルはインパクトがありますし、略称の『ゼロヒャク教科書』もキャッチ―でよいですよね。
私もそのまま長いタイトルを使わせていただきました(笑)。本書も、本エントリーも、もしかしたら史上最も長いタイトル?少なくともB'zの「愛のままにわがままに、僕は君だけを傷つけない」を越えていることは間違いありません。SEO的にはアウトですね。
大人が間違いに気付く本
可愛らしい表紙ですし、子供とお母さんらしきアイコンがあって「学ぶ人」と「育てる人」とあります。この表紙から、子供向け、お母さん向けかなと思って読んでみると、そうでもありません。
0才から100才まで学び続けなくてはならないのは、もちろん子供だけではなく、20歳を過ぎた大人も対象です。あえて言うならば、既に定年を迎えている方で、もうリタイアを決め込んでいる方は対象から外れるでしょうか。
『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』で言うところの3ステージで過不足なく人生を終えられる方は、無理に学ぶ必要もないのかもしれません。もちろん、定年後には本当にやりたいことをやる!と決めている方であれば、きっとこの『ゼロヒャク教科書』からヒントを見つけることができるはず。
落合陽一×堀江貴文というコンビの著書、『10年後の仕事図鑑』を読んだときにも感じました。この本も、落合先生は高校生くらいをターゲットと仰っていましたが、著者が想定しているターゲット以外であっても、何かを得ようという気持ちがあれば、いくらでも学びを得ることができます。
特に落合陽一×堀江貴文という組み合わせは、読者にとっては刺激が強い。Twitter上では炎上したり論争になっている(お二人はそう思っていないかもですが)のをよく見かけますが、その分、発言にポジティブに向き合えば、突き刺さる言葉は多いのです。
落合陽一のつくりかた
『ゼロヒャク教科書』第2章では、落合先生の幼少時代から現在に至るまで、どんな学び方をしてきたかが書かれています。これはNewsPicksの動画コンテンツ、Weekly Ochiaiでも取り上げられていましたね。
まぁ、同じようにやったからといって、落合先生のように育つかと言ったら何とも言えませんが。落合先生のご両親が与えた環境だけでなく、幼少時代の落合陽一の好奇心があってこそ、今の落合先生があるわけですから。
でも、色んなものを分解しても怒られなかったという家庭環境は、子どもの好奇心に蓋をしないということで、とても重要なことだと思います。これはどの家庭でも参考になりそうですね。
仕事でも、あれやれこれやれと1から10まで指示するよりも、部下の自主性に任せた方がよいですよね。もちろん失敗もしますが、それは成功するために必要な過程ですし、仕事に主体的に取り組むためには、裁量を与えてやるのが一番です。
失敗と言えば、落合先生も受験には失敗していたのですね。でも、東大に落ちて筑波に行くことになったというのは、失敗と言っていいのかどうなのかわかりませんが(笑)。
ゼロヒャク教科書は、ビジネスにも転用できる考え方が満載です。元々、なぜ0才から100才まで学び続けなくてはならないのかと言えば、人生100年時代で、働き方を考えていかなくてはならないからです。
ですから、ゼロヒャク教科書は子供から大人まで、これからの時代にどう働くか、そのために何をどう学ぶか、ということが書かれているのです。
STEAM教育という学び方
第3章ではSTEAM教育にも触れられています。STEAM教育とは科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、アート(Art)、数学(Mathematics)の頭文字をとったものです。元はSTEMだったのが、Artが加わりSTEAMになりました。
分かりやすく言えば、STEMは理系で、そこにアートという文系を取り込んだということになりますね。
落合先生は『ゼロヒャク教科書』の中だけでなく、普段から文系、理系という二元論で物事を考えることに反対されているので、あまりこの例えはよくないのかもしれませんが、分かりやすく言うと、ということで。
今の世の中は、基本的にはテクノロジードリブン、理系が力を発揮する世の中ですが、美意識、哲学といったものが根底にないと、本当に良いものを作ることはできません。
STEAM教育については、『世界を変えるSTEAM人材 シリコンバレー「デザイン思考」の核心』に詳しく書かれています。シリコンバレーでもSTEAM教育を受けた人材の評価が、大いに高まっているそうです。日本ではまだまだ聞きなれない言葉ですが、アクティブラーニングやEdTechに続く、教育業界のバズワードになりそうですね。
まとめ的なもの
『ゼロヒャク教科書』書中のコラムに「標準化・均質化された<近代>を乗り越える」というものがあります。ここでも脱近代、いつものテーマです。近代というのはあらゆる面で標準化・均質化し、それによって生産効率を高めてきました。日本も高度成長期はそれが最適解だったのかもしれませんが、今はそういう時代ではありません。
年始に出版された『日本進化論』では、今の日本を取り巻くいくつかの問題にスポットを当て、脱近代論が展開されています。
そんな中、教育にスポットを当てて脱近代を論じたのが本書、『ゼロヒャク教科書』です。失われた30年、平成が終わろうとしている今こそ、あらゆる面で脱近代を考えていかなければなりませんが、新しい元号、新しい時代を生きていくマインドセットを作り上げるために、まずは教育、学びをアップデートしていかなければなりませんね。
0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書
- 作者: 落合陽一
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2018/11/29
- メディア: Kindle版
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『劣化するオッサン社会の処方箋』中身までオッサン化、劣化させないために。
NewsPicksの特集と連動した書籍
山口周さんの『劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか』を読みました。この本はNewsPicksの「さよなら、おっさん社会」という特集に加筆修正したものです。NewsPicksの特集はかなりセンセーショナルで、否定されたと感じた年配の方の怒りコメントがかなり多くあったように思います。
特集の中で、一般的な定義とは違う旨は記載ありましたが、有料記事ということもあり、タイトルの「さよならおっさん」という部分だけ見て反応してしまった方も多いのかなと。NewsPicksでは、「年齢や性別は関係なく、新しいことを学ばない、自身をアップデートしなくなった人のこと」という定義付けをしていました。
この特集自体は面白かったですし、おっさんの定義もなるほど、いるいる!と共感できるのですが、それはNewsPicksのユーザーの中にも一定数いるはず。これはユーザーに対する注意喚起の側面もあるのかなと思いますし、特集とはいえ有料ではなく、全編無料で配信したらよかったのになぁと思ったものです。
オッサンの定義
NewsPicksの特集予告編に示された定義は上記の通り、「年齢や性別は関係なく、新しいことを学ばない、自身をアップデートしなくなった人のこと」ですが、山口周さんの定義はより詳細です。
本書から引用します。
- 古い価値観に凝り固まり、新しい価値観を拒否する
- 過去の成功体験に執着し、既得権益を手放さない
- 階層序列の意識が強く、目上の者に媚び、目下の者を軽く見る
- よそ者や異質なものに不寛容で、排他的
いるいる!と思いながらも、自分もズキズキ痛む、という方もいらっしゃるでしょう。そう、この定義から完全に逃れられる人のほうが、少ないのではないかと思います。全て当てはまるという方もまたレアケースかなとは思いますけどね。
また本書では、特にオッサンが多いのは、今の50、60歳代だとしています。70歳代以上は戦後復興、高度成長、ジャパンアズナンバーワンという大きなモノガタリを持っています。逆に40歳代以下の世代は、どん底からのスタートで、新しいモノガタリを持つ世代だとしています。
社会から約束を反故にされた世代
引き算してみると、今50、60歳代の方は、バブルが崩壊した時は20~30歳代となります。バブリーな先輩たちを見て社会に入ったら、全然話が違う!とか、下積みを終えてそろそろ役職もついてブイブイ言わすはずが…、とか、そんな感じでしょうか。
こう言ってしまうと失礼ですが、社会人としてのメインプレーヤーとなるはずの年代のほとんどを、前の世代の失敗の後片付けに費やしたということになります。30歳代でバブルがはじけ、失われた30年を経て60~65歳で定年、ということですから…。
本書でも、以下のように書いています。
~二十代という「社会や人生に向き合う基本態度=人格のOSを確立する重要な時期」を過ごしたのちに、社会からそれを反故にされた世代~
それゆえに、
~社会や会社に対して「約束が違う」という恨みを抱えたとしてもおかしくはありません。
として、世代としての劣化するオッサンを定義しています。もちろん言うまでもないですが、個別に見れば素晴らしいおじ様たちもたくさんいらっしゃいますし、「劣化したオッサン」ばかりだなんて全く思いませんが。
言葉のチョイスがセンセーショナルなので、ざっくり一般化して考えてしまうととんでもなく失礼なことになってしまいますね。
オッサンの生きる道
そんな耳を塞ぎ、目を覆いたくなるような劣化するオッサン論が繰り広げられる本書ですが、ただのオッサン叩きで終わるわけではありません。それではただの批判でしかないですからね。
オッサンたちは知識も経験も、若い人たちよりも多くしています。それを活かしつつ、オッサンの定義に当てはまらない、つまり逆を行けばいいわけです。多くのオッサンはそれなりの役職についていることも多いでしょうから、サーバントリーダーシップを発揮してチームを支えるのがよい、と提案しています。
サーバントリーダーシップとは
昔ながらのリーダーシップは、ピラミッド型のヒエラルキーの頂点にいる、支配的な リーダーシップです。これに対してサーバントリーダーシップは、メンバーを下から支える逆三角形のイメージ図で示されることが多いですね。
チームの主役はリーダーではなく、メンバーです。このメンバー個々の力を最大限に引き出し、活かしてあげるのがサーバントリーダーシップです。
まとめ的なもの
タイトルは一種の炎上商法じゃないかと思えるくらいわかりやすく批判的なのですが、ただの否定に終始したような本ではありません。劣化するオッサンとはいっても年齢の問題ではなく、凝り固まった考え、学ばない姿勢にたいする警鐘を旨とする内容だとわかれば、受け入れられる内容でしょう。
健康面でのアンチエイジングは以前から人気のある市場ですが、リカレント教育や生涯学習といった知性面でのアンチエイジングも、積極的に行っていかなくてはいけませんね。
劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか (光文社新書)
- 作者: 山口周
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2018/09/13
- メディア: 新書
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「LEADERS5.0」原田泳幸氏、マクドナルドの経営改革。
年も明けて、もう三週間が経とうとしています。年始は連休からスタートするので、月次決算業務が忙しく、バタバタしておりました。また、年明け早々に契約書チェック、作成案件がいくつも同時に舞い込んだり、エアコンが壊れて業者手配したり、突発的な案件が重なってさらにあたふたしてます…。
そんな中、今年一発目の講演会に参加してまいりました。
LEADERS5.0
1月10日、この日は以前から有休をとっております。忙しくてもこれは別。目的は「LEADERS5.0」というSansan主催の講演会への参加。以前もSansan主催の異なるテーマの講演会へ参加しております。
毎回ゲストがとても豪華で、できれば毎月参加したいくらいです。本当は「管理職」対象ですが、係長の分際で申し込んでおります。申込フォームには課長職以下の選択肢もあるし、ちゃんと当選しているので、後ろめたさは全くありませんが。
経営改革はシンプルに
登壇者は元マクドナルドCEO、現在は株式会社原田泳幸事務所の代表を務める原田泳幸社長。テーマは「アップル、マクドナルドらしさを追求した経営改革」です。原田社長の仰ることは、とてもシンプルで突き刺さります。経営というのは何も難しい戦略や理論を振りかざすことではなく、シンプルな基本部分の追求なのかなと感じました。
原田社長がマクドナルドの社長になってまずやったこと、それはQSC以外「やらない」こと。QSCとは飲食業界の常識で、クオリティ、サービス、クリンリネスの頭文字をとったもの。品質、接客、清潔さですね。飲食業としての基本を一年間、徹底したそうです。
「らしさ」の追求
それから「らしさ」の追求。マクドナルドでアンケートをしたところ、女性が求めているのはサラダだという結論に至ったそうです。それでマクドナルドでサラダを出したところ、全く売れなかったのだとか。
健康志向なら、元々マクドナルドには行かない、消費者からしたら当たり前のようにも思えますが、企業として色々な戦略をとっていくうちに、自らの「らしさ」が見えにくくなってしまうこともあるのでしょうね。
大企業では特に、多角化が当たり前のように行われていますが、創業の精神だとか、会社の大きなビジョンを抜きにしては、顧客の心に深くリーチすることはできません。
多くは語らない
原田社長の人柄を垣間見たのは、スティーブ・ジョブズの話をしなかったことです。ただただすごい人、というくらいの簡単な言葉のみ。スティーブ・ジョブズについては多くの本がありますし、多くのアップル信者=ジョブズ信者がいます。いろいろなことが書かれたり言われたりしていますが、実際に何年も仕事をした原田社長から見ると、正しくない書かれ方をされているものも多いのだとか。
ですが、ジョブズのすごさは簡単に語れるものでもなく、聞かれれば話すけれども、そうでもないのに積極的に多くを語ることはしないとのこと。スティーブ・ジョブズと一緒に仕事をしていたなんて、とても誇らしいことですし、私なら少し自慢したくなります(笑)。
それをしないというのは、スティーブ・ジョブズは軽く語れるような人物ではないという尊敬の表れのように思います。
原田泳幸語録
講演の最後に、30ほどの原田泳幸語録をスライドで紹介してくれました。多くは読み上げるだけでさっさとスライドが切り替わってしまいましたが、いくつか、その意図を説明してくれたものもあります。
一つだけ紹介します。
後継者育成はマネジメントの使命である。
部下を持ったら3年以内に、自分の後継者を作ること。とても当たり前のことですが、できているかというと難しいですね。自分の知識やスキルをどう移転するか、日々の業務をこなしながらも並行して考えていかなければなりません。
これができないと、次の世代が上がってこず、人事が滞ります。そこから組織の綻びが生まれてしまうのでしょうね。組織はとにかく人で成り立っているということを考えさせられますね。
まとめ的なもの
Sansan講演、前回はイノベーションの話で華やかでしたが、今回はどちらかというと泥臭い、地道なお話でした。
でも、仕事というのはそういうものですね。対外的には表面の綺麗な部分しか見えませんが、水面下では白鳥もせっせと水搔きしているのです。原田社長になってからのマクドナルドは綺麗なV字回復を成し遂げますが、魔法や手品のようなものを使ったわけではありません。一年間はきっちり基礎に立ち返ってQSCを徹底し、役員も刷新し、色々な制度にメスを入れた。かなりの痛みを伴う改革だったはずです。聞くと見るとは大違いと言いますが、改革の社内視点はこのようなものなのでしょう。
私も間接部門として、地味な仕事、泥臭い仕事は慣れっこですが、経営者はそれを矢面に立ちながらこなすわけですから、本当に大変な職業だと思います。いつも会社ではぶーぶー言っていますが、たまにはうちの社長も持ち上げてみましょうか(笑)。